月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

2018年11月のブログ記事

  • 失恋一人芝居

    ワンルームマンションが広く感じる 正方形の部屋の片側のエアマットレスで 膝を抱えて猫背で窓から陰っていく空を眺めている 色んなことが思い出されるよ 若い頃悪い男に酷い目に遭わされたのを帳消しにできるほど できると思ったんだ あなたとなら過去はなかったことにできると思ったんだよ だから信頼するパート... 続きをみる

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  • テーブル椅子のぬいぐるみ

    告白をしたのは 夜中に感傷的になったからだと あなたが受け流した瞬間の 私の気持ちがどんなものだったか わからないでしょう リビングには大きなぬいぐるみ 腕枕に頭を乗せながら あなたが笑って流した時の顔と 「ああ、このぬいぐるみはあいつの……」 いや、違うな、と口をつぐんだ顔を思い浮かべてる 気分... 続きをみる

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  • 意地悪な気持ち

    彼と私が喋り出すとうつむいて 美女でもないのに奇麗に涙を流し 女優でもないのに奇麗に涙を拭く そして健気にニコニコ笑っている ずっとニコニコニコニコ  機械みたいに その笑顔に意地悪な気持ちが湧いた19歳の春 あんなに器用に笑えない 奇麗じゃないのに人前で泣けない 崩れた顔は無様で笑われるだけ な... 続きをみる

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  • 罪はどこまでも深く

    Sさんが、Sさんが 熱に浮かれたように、あなたが言う Sさん、二千円しか持ってないのに饅頭買って俺と分けたんだぜ あの頃は俺金持ってて、楽しかったなあ 車のフロントガラス越しの空を 夢見るように微笑みながら、あなたは見上げる 女を惹きつけるためのあざとい演技から離れた眼差しで 普段現れないあなたが... 続きをみる

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  • この歳になって

    この歳になって誰かに見られたいわけじゃない ただ気持ちを吐き出したいだけなんだ それなら日記でもかまわないはず そうだ私にもわからない きっと露悪趣味的な何かなんだろう 曝け出して同情を買うか下劣な奴 いやそうじゃない この歳になって同情されたいなんてことはない まだ誰かわかってくれるなんて期待を... 続きをみる

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  • お願い

    ママ パパとお別れする前は朝起きてくることはなかったのに どうして新しいパパのためなら起きてご飯をつくれるの パパ パパはとってもハンサムだったけどママはパパ嫌いって どうしてママがいるのに新しい女の人のとこ行くのって ママ パパ 私もうどっちの話も気持ち悪くて聞きたくない気づいて 私もう子供じゃ... 続きをみる

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  • 虚ろな嫉妬

    赤い唇が笑っている スマートフォンを眺めながら、オーバーリップ気味の唇が 時折歪みながら笑っている なにもない白い肌 電車でよく見かける類の若い女に胸がチクリと痛む 私を切り捨てたあなたの娘を重ねあわせて 後にも先にもカミングアウトした恋人はあなただけ 軽くあしらわれたあのショックは あなたへの失... 続きをみる

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  • 恋愛試合

    自分の女を私に引き合わせるの これが3人目ね とどめがとんでもない美女だったこと あなたはきっと計算ずくで 病気で死を宣告され離婚されたがゆえに人の痛みがわかる女 子供二人を抱えて離婚しても生活のためにたくましい女 それで私はあなたに気を許した 善意で私が良くなるように他の女を引き合わせたんだって... 続きをみる

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  • 今日は死ぬのに最適な一日

    ……ずっと昔、私がまだ若かった頃、なしくずし的に一緒にいた男に本命の彼女を紹介されたことがある……男の上司とも関係のあった女の人だが、離婚して二人の子供を抱えて昼は会社勤め、週末の夜はクラブでコンパニオンをして生活していた。 「お客さんは靴見るよ。これあげるわ」 彼女は住んでいる団地の玄関脇のシュ... 続きをみる

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  • 忘れない

    あの夏 自分をコントロールできなくなった私は 普段知り合うはずのない男とつきあい 誘われるがままにどこまでもついていった やや高級なマンションの一室につれていかれ そこには部屋の持ち主の忍ちゃんがいた 忍ちゃんは血小板が減って28歳のその時に 35歳までに死ぬ病気とやらで 子供を取られ離婚され、慰... 続きをみる

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  • ほんのひととき 罵声と哄笑の飛び交う頭を休め 夢を見ていた 傷つかないという、 それ自体が手を叩いて笑いを呼ぶような 感傷的な夢を

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  • 幽霊

    ステージのエアコンがバチバチと鳴っている 鉛筆ビルのカラオケボックスの外壁が わずかな隙間を隔てて建つ隣のビル越しに 巨大なものにどつかれたように ガン、と大きな音を立てた 足元の床が 階下から洗濯竿で突き上げられたように ガン、と鋭く鳴って揺れる トモダチがニタニタ笑っている 猫を連想させる瞳が... 続きをみる

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  • 美しい友人

    麗しい友よ あなたの髪は栗色で柔らかでうねることなくまっすぐだ あなたの肌はしみひとつなく透き通っていた よどみなく美しい日本語を操り 品のある佇まいをして 私はどれだけあなたを崇拝していただろう あなたにへつらう私に、あなたはメールをよこした 「初めて見た時、ソフトで女らしい顔だと思ったよ   ... 続きをみる

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  • 愚かな灰かぶり

    灰かぶり姫は猫をかぶって 好機をうかがっていました 見初められる夢を見ていた 誰かにただそれだけでした ヒソヒソと囁き指さされる 体の痣をメスで切り取って 目が細いと笑われるならば 二重のラインをメスで刻み 大きな鷲鼻をけなされれば ノミで段を削り小鼻縮小し ガスレーザーで黒子を焼き やれることは... 続きをみる

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  • トモダチ

    ようやったと思うで 笑ってるような泣いてるような顔で トモダチは言う 借金 子供 女 身内 すべてに嫌気がさして アパートの四階からトモダチの兄は飛び降りた 返す言葉に戸惑う 優しいから困ったように振舞ってみせる けれどどうでもいいと思ってる自分がいる 人の気持ちなんてそんなもの それから自然消滅... 続きをみる

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  • サイレンと骨

    真夏の盛り けたたましくサイレンが鳴り響く 子供だった私は机の下に潜り 一分間の黙祷どころではなく 激しく迫るサイレンの音に ヘリコプターの音が重なると 落ちる 爆弾が落ちると 耳を塞ぎ瞼をギュッと閉じた 学校の近くにある団地の一角が 家賃が安いと同級生が言う 幽霊が出るからと しかし実際に幽霊を... 続きをみる

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  • 窓越しに 旅先にて

    飛行機窓から覗く街並みが 模型のように粒状になり遠ざかる 堕ちたら死ぬという高みを過ぎて ちぎれ雲が現れ それは足跡のない早朝の雪景色や 真っ青な空に次々と姿を変えていく なんて表情の豊かな空 降り立った地を車で走る どこまでも続く道の脇に白樺が 一糸まとわぬ姿で屹立している 黄、茶、緑のグラデー... 続きをみる

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  • 男は支離滅裂に自滅する

    「三日が百日にも思えたことがある?」 ベンツの左ハンドルで夢見るような目つきで彼はフロントガラスの向こうを見つめる 助手席で私は生理的嫌悪感を抱きながら彼に視線を走らせる 芝居がかっていてあざといから きっとバブルの頃ホストだった時に身に着けた女を落とすテクニック 「俺、貯金ゼロのお客から500万... 続きをみる

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  • オレンジと甘エビ

    旅先の地の すでに冬のごとく冷たく澄んだ空にかかる クレーン車のオレンジが鮮やかに この目に映る 昼食の甘エビは甘く舌を驚かせた 長いあいだ 街も人も映る景色は砂画面 SSサイズの体で食べるものは味のしないガムのよう 帰ってきた私の感受性 おかえりなさい

  • 「自分で自分のことも出来んやろ」 そう言ってあなたは去り際に 私の心に刺さって取れない 小さな棘を残していきました 愛のかわりに信頼が残っていたので あなたのその捨て台詞で 私の心に永遠に鍵がかけられたのです

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  • my lot soul

    「絵は魂だ」と映画の台詞 詩も多分同じ 魂が入っていなければ ただの言葉の羅列 私の魂はおそらく空っぽだ 何処にあるかもわからない 医者は脳の視床下部にあるという 作家はお腹のあたりにあるという 魂の在処も知らないのに 空虚な魂の存在を漠然と感じる それでも書き続けよう いつか言葉は歌に変わるだろ... 続きをみる

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  • 井戸の底から(私の魂より)

    暗い 冷たい水が口の中まで入ってきて 沈むまいと手足をばたつかせる ふいに頭上高く 陽の光で明かるく切り取られたような円の縁で 女の顔がこっちを覗き込んでいる じっと複雑、悲し気な顔をして 助けて、と水を吐きながら叫んでも答えない 去っていく あの円から……昔私をあそこから投げ入れた女が お前は邪... 続きをみる

  • 井戸の底(現在から)

    心に井戸を掘って記憶を沈めた それから20年 見たの 見たの 井戸の縁からそっと底を 暗闇にまぎれて 若き日の私がいた 殺した殺されたはずの魂が それからおよそ10年におよぶ自暴自棄の時を どろりとした井戸の底の腐った水に 足をとられて もがいてる あがいてる 独りで空を掴もうとして手を伸ばしてる... 続きをみる

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  • ミエミエノユメ

    「あいつには子供がいるんだぜ。なのに若い男を家に入れてるんだ」 ヤメテ ナマナマシイハナシヲシナイデ ワカレタオクサンヲ アイツナンテヨバナイデ 「あいつは子供が嫌いだったんだな。自分の子供だから、まだ……」 ヤメテ アナタノコドモダカラウンダト ソウイイタイノ ヒトリゴト キカセテイルノ 「子供... 続きをみる

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