月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

愛を乞う彼


美貌だった。とても美しい人だった。カオリという、彼が引き合わせた本命の女は
しっかりしてた。人間のできた人だった。ユウコという、彼が付きあってた女は
とにかく優しかった。子供を奪われたシノブという、彼を好きだという浮気相手は


「カオリみたいな奇麗な子が、前は男に貢いでたんだぜ」
「惚れたっていうのは、弱みを握られたってことね」
クールな反応で予防線を張る
「俺を見てそう思うの?」
彼は小さく笑みをつくった。


「ユウコの家は団地だから住めないなあ。出ていく金も多いみたいだし」
バツイチ子持ちで昼も夜も働いているユウコさんのことを彼は愚痴った
「それに、あいつ俺と別れるって一度言ったんだ」
「別れるの?」
「また言われたらね。二度目を取り消す奴は信用しない」


「シノブは子供産んでいるから生活感あるけど、お前にはない」
人差し指を立てて誘発するような笑顔で彼は弾ける声を出した。
「ほら、メールきたぜ。あなたに私をプレゼントしたいですって」
「いいなあ、色んな人にもてて」
「妬かないの?平気?ねえ、本当に嫉妬しないの?」


「おかしい、俺になつかない。こんな女ははじめてだ」
「クールにハードボイルド気取りやがって」
「今いくら持ってる?貸して」
「俺のロボット」
「俺のこと嫌いなのは知ってるよ!」


・・・後年、彼との話を面白おかしく小説のネタにしたことがある
講師は男の悪を良く描けたと褒めたあとで付け足した。
「この男性は愛を求めていたと思います」


被搾取者の私は悲しくなって横を向き、クールにみせようとする
そんなの知ってるわ でも愛するわけにはいかなかったのよ
彼にとって無償の愛が愛だったのだから