月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

二重へのこだわり

整形二重が崩れていく
瞼が弛んでメスで刻んだ二重のラインが見えなくなる
アイプチをしても瞼の皮膚が伸びているので効果がない
それでも藁にもすがる思いでアイプチの液体で二重をなぞる
液体が目に入り水で洗い流す
焦りにも似た 重い瞼に押し潰された細い目に戻っていく恐怖


生まれつき目は糸のように細かった
物心ついた頃から
父親に笑いかけられたり無駄口を叩かれたおぼえはない
学校で有名なイケメンが私を好きだと公言して
「本当にあいつか?」と不信と嘲笑が渦巻き
その男は誰が見ても可愛い女のところに行った
すべては私の埴輪のような目と分厚い瞼のせいなのだと
整形ばかりを考えた十代だった


切開二重を頼みにいった有名な形成外科医は私を怒鳴りつけた
「芸能人やおかまの人は、顔で食べていくしかないんだ
 お前は普通の子だからしないでいいんじゃ!」
奇形や火傷、酷い怪我の跡の症例を見てきたゆえの台詞
それは正しい
けれど二十歳の私は、自分の傷を癒すのに精一杯で


いつかまた、私はぱっちり二重になるために整形するだろう
愛されたいからではない
自分を愛するためだ
醜い自分は愛せない 幾度整形しても愛せない私が
加齢による目元の崩れに耐えられるわけがない


整形なんて大したことではないのだ
けれど知っている
本当は止めてくれる男の人に愛されたかったことに
そんな人にただの一度も愛されなかった虚しさが
私を美醜へのこだわりに駆り立てることに