月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

おしまい

愛してると 一瞬は思う
言葉にほだされることも 一瞬はあった
その繰り返しだった日々
本音を言えば 本質的には嫌いだった
好きだったなんて そんなことは一度もなかったよ
でもそんなのお互い様でしょう


このまま
軽蔑と嘲笑さえ面倒になって
歳をとり どんどん忘れていけばいい
なかったことになって
すべては空へと消えてしまえばいい

共依存

あなたの子供時代が陰惨だったと人づてに聞かされて
テレビでやっている虐待しか想像できない
決して自分からは過去を語らないあなたに
何があったの? 
ネグレクト 暴力 母親の奔放な恋愛遊び
思いつくものはドラマの域を出ない私に
あなたは責めるように前の彼女の話を


千代子なんかなあ、十錠飲んだら死ぬ薬飲んでたんだぞ
鬱病の薬くらいで 俺なんか
千代子の飯、Sさんが美味い美味いって
俺のこと 好きや好きやって あんな体で福祉の仕事しとった
千代子が本当に大事なのは薬だけ
あいつの母親も変な人で 千代子も親戚の家をたらいまわしにされとって
千代子、母親が死ぬほど怖いねん


あなたと千代子さんの恋愛は、心中未遂の果てに
彼女が入院するほど精神を病んだことで終わりを告げた


「君はどこか千代子に似ている」
「千代子と同じこと言う」
それであなたは後釜に私を選んだの?


似ていたって生まれ育った環境が違えばわかるはずもない
どこまでも私はありふれた、どこにでもいる、平凡で幸せな家庭の娘で
わからないの やめてやめてやめて
千代子さんが与えたものをあなたに与えられないからと言って
私を罵しらないで 私は私 あなたの気に入るようになんて振舞えない


長い年月を経て呪縛が解ける
私のことを知りもしないで安易に寄ってきたのが悪いのだと
それでもこの胸の痛みはなんだろう
割り切れないの 今でもチクりと胸がいたいの
他人事だと 私じゃなくて良かったと 大笑いできたら楽になれるのに
情がわくまで一緒にいた代償は私の人生に死ぬまで影響を及ぼして
千代子さんと同じにできなかった罪悪感が心の底に沈んでいる


「人間関係はメカニックに それが本当の思いやりなのかもしれない」(鈴木いづみ)

私なんか

知らなかったわ
知らなかった
嬉しかったの
私が誰かを傷つけられるなんて
あんな奇麗な人が
私なんかとあなたのことで
泣いただなんて
私なら
腹を抱えて笑いだす
あなたあんな醜い女と?
ご苦労さまねえって
泣いたのが
芝居じゃなくて本気なら
光栄だわ
私が誰かを
自分より「上」の人を
傷つけられるなんてねえ
「私なんか」が