月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

テーブル椅子のぬいぐるみ

告白をしたのは
夜中に感傷的になったからだと
あなたが受け流した瞬間の
私の気持ちがどんなものだったか
わからないでしょう


リビングには大きなぬいぐるみ
腕枕に頭を乗せながら
あなたが笑って流した時の顔と
「ああ、このぬいぐるみはあいつの……」
いや、違うな、と口をつぐんだ顔を思い浮かべてる
気分はどこまでも落ちていく
でも安定剤や睡眠薬をあなたが嫌うから
この腕を失いたくなくて飲まずにいる


「十年も一緒にいたんだ、いつまでも忘れんよ」
別れた奥さんをあいつ呼ばわりしながらあなたは言う
私の気持ちがどんなものだったかわかる?
過去の「事件」にあなたは関心がない
「あいつ」のことに比べたら蚊のようなものだって


でもそれが当たり前なんだ
私だってあなたの別れた奥さんの話は聞きたくない
けど違うのは
あなたは本当に私の告白した過去に興味がなくて
私は「あいつ」をまだ愛してるのか興味があること


皆が皆彼氏彼女のことを何でも知りたいわけじゃない
ただ私達の間は殺伐としているように感じている
あの色褪せた巨大なクマのぬいぐるみが
「あいつ」の残していった思い出と一緒に
大きな顔をしてテーブルの椅子に座ってる
それがとっくに出ているこの関係の答え


もういいよ出ていくから
いつかは悪夢から起こしてくれてありがとう
あのクマをもう見たくないんだ
「あいつ」が出ていく時、あなたは
「好きなものをなんでも持って行っていいよ」と言った
私にそんな権利はないし、あなたも言ったりしない
ありきたりに思い出だけを持っていくよ


最後にいい思い出だけが残る人なんているのかな
そうなるように祈るから
あなたのことを
私のことも