月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

犬のように

生まれつきもてる才能を備えたあなたに
会うたびにのめりこんでいくのは当然のことでした
どこまでもナンセンスな趣味を持つ私は
あなたの甘い声と色気と端正な顔と女あしらいのうまさと
なおかつ普通の勤め人という肩書きに
安心して飛び込んでいくことができたのです


子供の頃から少女漫画ばかり読んでいた
映画は名作とよばれるベタな悲劇が趣味で
着る服はピンクや淡い色のワンピース
己の目鼻立ちを個性と思えず世間の価値観にあわせ修正して
おとなしいおしとやかと言われ反発心も抱かず
どこまでも俗物な私にあなたはうってつけだった


けれどあなたは心の中で算段をしていた
マンションのローン 養育費 私のそこそこの給料
狙いは私を思い通りに操ること 心も体も持ち物も
かつて私を地獄に落とした悪い男との違いは
あくまであなたは堅気で私を物だとまで思ってはいないこと


それでも付き会えば付き合うほど
あなたの腹の底がわかって寂しくなるばかりでした
あなたの思い通りになるほどおとなしい女ではなく
あなたの願い通りになるほど頭の切れる女ではなく
やがて捨てられる日が来るのに気が付きながら
あなたに会えばあうほどなついていく犬のように


出会わなければよかったと いっそそう思えたら良かったのに