月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

また同じ話 夜毎の涙

あなたに去られたのは
心の傷が引き起こす問題行動などではなく
単に「使えない」からだった


「自分で自分のこともできんだろ」とあなたは言った
現実的なその言葉に私は打ちのめされた
それまでの十年、精神的に救われることだけを考えていたから
周りから見れば「やることやってくれればいいのに」
地味で冴えない私の役割はただ馬車馬のように働くこと


どうして割り切れなかったのでしょう
むろん子供の頃から「その他大勢」として見られることもせず
鈍臭いと容赦なく罵られ
そんな私が「結婚したい」と望むのは
家事育児仕事をこなすことを要求される
ハードルが高いことだと気づきもせずに


精神を根本から破壊する暴行を受けても
カミングアウトをしても
美しくない女は「守ってやる」とは思われないのです
圧倒的な力でねじ伏せられ打ちのめされた女が
職場で男の人に囲まれ対等にやっていくことの恐怖など思いやってもらえない


些細なことで少しでも声を荒げられ怯える
何かされると思うからではなく
あの記憶が即座にフラッシュバックするから
美しく若くなければ誰にも守ってもらえない
絶望感が私を捉え銃を向けられた囚人のような心持ちになる


幾度も首を絞め大量服薬し
それでも確実に痛く死ぬ飛び降りや焼身自殺はできなかった
心の隅に誰かが現れるというシンデレラ願望があったから
望みのたたれた年齢になっても
死んでも珍しくない年齢になっても
希望は潰えても死ぬに死ねない私がいる


一度はあなたの腕枕で眠り、悪い夢を見れば強引に起こしてもらい
あの瞬間生きていて良かったと思いました
そのためにできればあなたの望み通りに働き家事をこなしたかった
明るく笑い逞しく生きたかった
あなたが私の傷のせいでなくこなせない不器用さのせいで去っていった時
あれだけ辛い思いをしたのに理不尽だと世の中を呪ったけれど
冷静に考えれば私とて一晩中腕枕をしてやっているのに立ち直らない女は鬱陶しい
人は身内が死んでも働いているものなのに


ここまで書いて思い至るのです
私は犯罪者ではなく被害者なのに、まるで犯罪者と同じ精神構造をしている
自分を責めて責めて生きている
そしてそれがわからないあなたといるべきではありませんでした
けれどこの世のどこかに
私の思いを汲んでくれる男の人がいたというのでしょうか?
実地の体験でなければ想像力
それほどの想像力を人間が持ちうるものだとは
当事者の私にはどうしても思えないのです


結局独りでいる 孤独に耐えること それが私に課された使命なのでしょう
おかしな話だけれど 近頃はそれがお似合いだと思うのです