月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

美しい友人

麗しい友よ
あなたの髪は栗色で柔らかでうねることなくまっすぐだ
あなたの肌はしみひとつなく透き通っていた
よどみなく美しい日本語を操り 品のある佇まいをして
私はどれだけあなたを崇拝していただろう


あなたにへつらう私に、あなたはメールをよこした
「初めて見た時、ソフトで女らしい顔だと思ったよ
    私も欠点ならいくらでもあるよ 鈍くさいし体弱いし
   もっと自分の顔に優しくしてあげて 神経を太く持って生きよ!」


メールであなたは
完璧な人間扱いしないで へりくだられても辛いと訴え
私の崇拝に調子に乗らない姿にむしろあなたそのものになってしまいたいと願った


整形を重ねて普通になり
あなたの顔に尖った部分がないこと
際立って美しいパーツがないこと
骨格もバランスも特に際立っているわけではないこと
夢から醒めたように私は内心意地悪になっていきます
粗を探すのは歳をとった証拠でしょうか
整形を重ねるうちに美醜に敏感になったからでしょうか


あなたは私を傷つけもする
複雑な思いが交差する
あなたに焦がれあなたに嫉妬する
麗しく映る品のある佇まい 口の動かし方の綺麗さ
実際の美以上のすべてに


あなたに会いたい会いたくない
美しいものは芸術作品に似て人の感情を傷つけもするものだから

愚かな灰かぶり

灰かぶり姫は猫をかぶって
好機をうかがっていました
見初められる夢を見ていた
誰かにただそれだけでした


ヒソヒソと囁き指さされる
体の痣をメスで切り取って
目が細いと笑われるならば
二重のラインをメスで刻み
大きな鷲鼻をけなされれば
ノミで段を削り小鼻縮小し
ガスレーザーで黒子を焼き


やれることはやったつもり
愚かで浅はかな灰かぶり姫
誰かでいいから寄ってきた
狼に食べられてしまいます


いつか誰かと幸せになれる
愚かで浅はかな灰かぶり姫
全然綺麗じゃなかったのに
抉って切り取って焼ききる
自分の醜さをそんなことで
どだい無理ですどだい無理
醜さのなかに美しさを見る
生きる知恵ですシンデレラ

トモダチ

ようやったと思うで
笑ってるような泣いてるような顔で
トモダチは言う


借金 子供 女 身内
すべてに嫌気がさして
アパートの四階からトモダチの兄は飛び降りた


返す言葉に戸惑う
優しいから困ったように振舞ってみせる
けれどどうでもいいと思ってる自分がいる
人の気持ちなんてそんなもの


それから自然消滅を図って返信を数度しないでいると
「死ねや お前落とす」
受信拒否に着信拒否
その晩は朝まで電話が鳴りっぱなしだった


それきりトモダチから連絡はなかった
私は彼女を怒らせたのか?
傷つけたのかもしれない
人への気持ちはそんなもの
人への気持ちははかりしれない