月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

あけましておめでとう 涙をこめて

涙が頬をつたう
私は今日も泣いている
泣いているのはいつもと違う理由
SNSに投稿された友人の正月写真が
20年以上の時を経て変わらず美しかったから


私より4つ上の彼女
肌の白さや髪の色、質は変わらないくらい
背格好も似ている
けれど写真に写る彼女は私とはまるで違う
ハワイでお気に入りの赤いゆったりとしたワンピースを着て
二の腕や膝下を露出しても
その佇まいの控え目で上品なこと
神々しいといってもいいくらいだ
その美しさに 学生時代 無邪気に「憧れ」の言葉を口にした自分を苦々しく思う


SNSで私が自分を卑下すると
気を遣って個人的にメールで注意してきたのは彼女
思いやりをもって
「私にも欠点はあるよ。鈍臭いくさいし、身体弱いし」
と嫌味ととれない人徳でもって私を感激させ
白か黒に転びやすい私を熱狂的な信者でいるのをやんわりと諭した


生まれつき勝者で恵まれたものの鈍感さや余裕だけではない
彼女は24歳で知合いもおらずに日本に貯金してやってきた苦労人
アルバイトはウエイトレス
コネも金もなく28歳で大手に20年前に新卒採用されここまできた
結婚もそのために遅く
海外旅行はそのご褒美 品のある佇まいは美しい姿形に胡坐をかかない内面のあらわれ
秀でた目鼻立ちではなく骨格やバランス、スタイルも目を引く優れた箇所はないのだ
それなのにこんなに美しい それは彼女の品や表情、姿勢や天性のポージング、知性ゆえ


彼女の運でもあり遺伝でもあり しかし内面を怠りなく美しく保った
世の中から逃げなかった 愚痴をこぼさなかった 悪口を言わなかった
彼女の美しさはいわば我慢の賜物なのである


それゆえに私は泣いている
顔立ち以外は似たようなものだと整形手術を繰り返し
それでも追いつけないのは骨格とバランスが悪いからだと
そればかりはどうしようもない 私のせいじゃない
しかし歳をとれば認めざるをえない
彼女にだって辛いこと気分の悪い事はこの汚い世の中で腐るほどあった
それでも彼女自身は腐らずにやってきたからこそあの美しさを維持できたのだ
私はといえば白い肌、栗色の髪、「あんな奇麗な脚あるねんな」と言われつつも
顔の醜さゆえに 発達障害ゆえに 自分を放棄して手入れを怠ってきたのだ
私は私として 自分を大事にせず すっくと立つこと
それが彼女にできて 私にできなかった 致命的な違い


しかしなにもかもが「自己責任」なのだろうか?
私には単に醜いというだけではなく「家庭内の美醜格差」があったのだ
身内が可愛かったがゆえに、外で「兄弟は可愛いのにね」と笑われるだけでなく
外面のいい兄弟からも「ブス」と指をさされ笑われねばならなかった
それでもすっくと凛としていなければならなかったのか?
壊れて自分を見失い、整形費用をつくり、整形するために「汚い」生き方をした
そんな人間はたとえ顔面を取り繕っても彼女のようにはなれないのだ


ああ今から嘆いてももう遅い
整形せずには「奇麗」とは誰にも言ってもらえなかった
「奇麗」どころか「ブス」と笑われる女がどうやって泣かずに生きてこれたのか?
それが「自己責任」なのか?


正月早々、詩を書きたいのにこんな文章を書き連ねて申し訳ない
どうやら私は今年も頭が混乱して使い物にならないようだ
それというのも私が望むのは「詩」ではなく「美」だからだ
もう二度と「ブス」と言って小突かれたり……頭を縫うほど殴られたりしないこと
そうなるにはどうしたらいい? いやもう歳をとりすぎてそんな心配はない
それでも私は自分が安全だとは思えないのだ
美人が羨ましいのはちやほやされるとか得だからではなく、
私にとっては殴ったり蹴ったり虐められない「安全地帯」にいるからである


ああ申し訳ない 混乱した頭で新年のあいさつをする


どうか今年一年、ただの一瞬も誰も心ない人によっていわれなく傷つけられませんように


あけましておめでとう 涙をこめて

謝罪

濁った頭で来年の抱負を誓う
「詩」を書く 日記や思いの垂れ流しではなく
「詩」が何かわかっていない
「ユリイカ」や「詩と思想」や「現代詩手帖」を買い
図書館で有名詩人の詩集を借りる
藁でもつかむように半ば溺れながらそれらを掴もうとしている
わかるようになるには 何かを掴むには 来年だけでは足りない


「石の上にも十年」と小説教室の校長は言った
なにかを極めようとすれば十年でも足りない
性的蹂躙から十年自分を見失いそれどころではなく
その後十年は疲れ切って眠っていた
そしてこれから十年切磋琢磨してもすぐに初老になる


それは私の弱さ
好きならば束の間現実を忘れて詩の世界に没頭できたはず
文字も目に入らなかったのは
現実ほどに言葉が大事でなかった証拠でしょう


現在でもさほど言葉を信用していないのです
私を救ったのは言葉ではなく
腕枕のうえで悪い夢にうなされる私を揺さぶる手だったから
愛してくれなくてもそばにいてくれる人の気配だったから
それらを失いはじめて言葉にすがりつく
言葉はその程度 がらんどうの私にはもはや響かない


そんな私の言葉に反応してくれる人がいるのはありがたいこと
実態は私の言葉は私の抜け殻、排泄物に過ぎないのだけれど
読んでくれる人がいる限り
絞り出すように痛みを感じながら誠実な文字を紡がなければならない


それが詩の礼儀 読まれる言葉の作法

また同じ話 夜毎の涙

あなたに去られたのは
心の傷が引き起こす問題行動などではなく
単に「使えない」からだった


「自分で自分のこともできんだろ」とあなたは言った
現実的なその言葉に私は打ちのめされた
それまでの十年、精神的に救われることだけを考えていたから
周りから見れば「やることやってくれればいいのに」
地味で冴えない私の役割はただ馬車馬のように働くこと


どうして割り切れなかったのでしょう
むろん子供の頃から「その他大勢」として見られることもせず
鈍臭いと容赦なく罵られ
そんな私が「結婚したい」と望むのは
家事育児仕事をこなすことを要求される
ハードルが高いことだと気づきもせずに


精神を根本から破壊する暴行を受けても
カミングアウトをしても
美しくない女は「守ってやる」とは思われないのです
圧倒的な力でねじ伏せられ打ちのめされた女が
職場で男の人に囲まれ対等にやっていくことの恐怖など思いやってもらえない


些細なことで少しでも声を荒げられ怯える
何かされると思うからではなく
あの記憶が即座にフラッシュバックするから
美しく若くなければ誰にも守ってもらえない
絶望感が私を捉え銃を向けられた囚人のような心持ちになる


幾度も首を絞め大量服薬し
それでも確実に痛く死ぬ飛び降りや焼身自殺はできなかった
心の隅に誰かが現れるというシンデレラ願望があったから
望みのたたれた年齢になっても
死んでも珍しくない年齢になっても
希望は潰えても死ぬに死ねない私がいる


一度はあなたの腕枕で眠り、悪い夢を見れば強引に起こしてもらい
あの瞬間生きていて良かったと思いました
そのためにできればあなたの望み通りに働き家事をこなしたかった
明るく笑い逞しく生きたかった
あなたが私の傷のせいでなくこなせない不器用さのせいで去っていった時
あれだけ辛い思いをしたのに理不尽だと世の中を呪ったけれど
冷静に考えれば私とて一晩中腕枕をしてやっているのに立ち直らない女は鬱陶しい
人は身内が死んでも働いているものなのに


ここまで書いて思い至るのです
私は犯罪者ではなく被害者なのに、まるで犯罪者と同じ精神構造をしている
自分を責めて責めて生きている
そしてそれがわからないあなたといるべきではありませんでした
けれどこの世のどこかに
私の思いを汲んでくれる男の人がいたというのでしょうか?
実地の体験でなければ想像力
それほどの想像力を人間が持ちうるものだとは
当事者の私にはどうしても思えないのです


結局独りでいる 孤独に耐えること それが私に課された使命なのでしょう
おかしな話だけれど 近頃はそれがお似合いだと思うのです