月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

月美の卑屈を生きる詩の新着ブログ記事

  • 下手くそ

    自惚れてるあいつが嫌いで反吐が出そうでした あいつは偽物で 学生の事はクラスで「気持ち悪がられていた」 親の愛情に飢えて ホストになってから女にもてる術を覚えた 自称「顔はまあまあ」の 言う事も声の出し方も表情もあざとい 私の出方によって態度をころころ変えて腹の中を露呈する 馬鹿な男 だから一緒に... 続きをみる

  • 名言

    あいつは最悪だった 楽して金儲けしたいだけの そのために女を利用する 父親と慕う男に利用される くず あなたは最高だった 働き養育費をきちんと払う そして私を子供のように 「誰も信じるな」と言って 立派 でもねおかしいのよ あのくずも私に説教するの 私に色々吹き込んでさあ 「誰も信じるな」ってねえ... 続きをみる

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  • 灰かぶり

    現実が容赦なくやってきて 私を夢から引っ張り出したのよ ええ夢のなかにいたの あなたといる部屋のなか そして手首を引っ張られていく私の背中を蹴ったのは 他ならない あなただったわ!

  • 終わり

    あなたがコンビニでヘアワックスを買って私の部屋に置いていくのを 喜んで見ていた あなたが段々私から距離を置いていくのを 漠然と感じだした 引き留める術は何も 何も持っていないから いるだけで人を惹きつける あなたみたいな横顔も 声も ふるまいも あなたが私の部屋に来ることは二度とないと慣れるのに ... 続きをみる

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  • 望むように

    地方から出てきたおぼこい親友は 「私はね、気分よく暮らしたいだけなんだよ。景色のいい所で、パン屋さんで働いて」 その夢を叶えるべく 大学生になって夜はスナックで働き卒業までに500万円を貯め 海外を転々としたあげく 40歳を前にエジプト人と結婚し男の子をもうけた Brave eyesと呼ばれる強い... 続きをみる

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  • レクイエム

    目が覚めたらね 「書こう」って心の声が聞こえたの とてもきっぱりと 二年前にふと思いついて三百枚半月で書き上げた 私とあなたと……「アンダーグラウンド」なことをする仲間達 それぞれに不幸で 悲しくて 優しくて 書き上げた物語は私に憑りついて この二年まるで何も書く気がしなかったのよ 読後はただの救... 続きをみる

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  • 捨て台詞

    「自分で自分のこともできんやろ」 あなたの別れる理由に用いた言葉は 率直で耐えかねた末のものだから私を傷つけ さりげなく自分を悪者にしないための詭弁だから二重に私を傷つけた けれどもう「男が悪者の役を引き受ける」のは時代遅れの世の中なのでしょう 私はといえば バブル世代の隅っこで 不景気になっても... 続きをみる

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  • 幕引き

    暗い部屋 柔らかな毛布 弾力のあるマットレスに身を沈め 日付や曜日の感覚をなくし 記憶のリバイラル劇場も頭から消えて 罵声 嘲笑 貶め そうしたものはそっと私の脳裏からどこかへ零れ落ちて 薬を飲んだように日に日に呆けていく 過去は流れて 私は苦しみを途中で忘れる 忘れないならそれは死によって終わる... 続きをみる

  • バブルの遺物

    ああそうか あなたは骨の髄まで バブルの遺物 バブルの犠牲者だったんだ 貧乏な子供時代 ホストになってドンファン自慢 左ハンドルの一千万円のベンツ ベンツだけが去らない バブルの終わりとともに あなたからいろんなものが去った 富と女達 家族 二人の子供たち ベンツだけがあなたといる 時代を越えて ... 続きをみる

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  • 泣かない

    とても大きな声で泣きわめき 一瞬でケロっとする子供だった 子供の面影が薄れていき 泣けば泣くほど 醜い顔が崩れて笑われ気持ち悪がられるだけだと 気が付いた思春期から 「誤解されるくらい」泣かなくなった その頃から 死が始まっていたのかもしれない

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  • ありがとう

    自分を取り戻す 本当の私を 私は私だと自信を持って 人生を生き直す それは女の生きづらさをわかっていない男の人の主張 私はと言えば 中学の時に 学校で影響力のあるM君に気に入られ 「Mの女」として扱われることで 私の悪口を言う連中を 「お前らあんまり言うなよ」と言い放てるだけの余裕のある 「プリン... 続きをみる

  • 芸術からの追放

    ……27歳のあの夏の朝を迎えてしまったせいで 私は壊れて自分を見失ったのだと思っていたが 心の奥底にパンドラの箱が隠されていたのだ 醜い側として扱われること 頭の鈍い人間として迷惑がられること それゆえに職場から逃げざるを得なかったこと 社会的立場を失った私が「仲間」から外されたこと まだ未来があ... 続きをみる

  • おしまい

    愛してると 一瞬は思う 言葉にほだされることも 一瞬はあった その繰り返しだった日々 本音を言えば 本質的には嫌いだった 好きだったなんて そんなことは一度もなかったよ でもそんなのお互い様でしょう このまま 軽蔑と嘲笑さえ面倒になって 歳をとり どんどん忘れていけばいい なかったことになって す... 続きをみる

  • 共依存

    あなたの子供時代が陰惨だったと人づてに聞かされて テレビでやっている虐待しか想像できない 決して自分からは過去を語らないあなたに 何があったの?  ネグレクト 暴力 母親の奔放な恋愛遊び 思いつくものはドラマの域を出ない私に あなたは責めるように前の彼女の話を 千代子なんかなあ、十錠飲んだら死ぬ薬... 続きをみる

  • 私なんか

    知らなかったわ 知らなかった 嬉しかったの 私が誰かを傷つけられるなんて あんな奇麗な人が 私なんかとあなたのことで 泣いただなんて 私なら 腹を抱えて笑いだす あなたあんな醜い女と? ご苦労さまねえって 泣いたのが 芝居じゃなくて本気なら 光栄だわ 私が誰かを 自分より「上」の人を 傷つけられる... 続きをみる

  • 本当

    本当のことはいつだって笑い話 「僕、子供の頃いつでも死にたいなあと思っていたよ  周りに気持ち悪がられてた  嫌いな奴の家に猫の死体を置いたり……」 これだけが笑えなかったの 嘘にまみれたあなたの きっとこの話だけが 本当なのに

  • フロント越しの空

    いつ死んでも同じ 死ねばすべて終わる その時は一緒に死のう 女たちから吸い上げて手に入れたベンツの運転席で なんでもないことのように呟いたあなたの前に フロントガラス越しの空が 何処までも青く輝いていた あの夏をあなたは覚えている? 死にたい気持ちとうらはらに 途切れることなく 生きるために 欲望... 続きをみる

  • 空っぽのキス

    商才に長けたあなたが 望むものを 物質を手にしているのを 想像するのは簡単 それでも 表に出られはしない 陽のあたることのない あなたの陰惨な人生に神の祝福を God bless you. Somebody loves you. 人を支配する欲望まで満たそうとした 若き日のあなたの 地獄に堕ちた魂... 続きをみる

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  • 下らない

    書かなければと 心は焦る 性暴力 醜形恐怖 発達障害 失恋 すべてランキングの圏外にとうとう落ちた それでも毎晩書かなければと 気持ちが急く 芸術家タイプでない偏差値至上主義だった私にとって 書くことは練習 毎日毎晩欠かしてはならない勉強 自分から目を離せば 世界は悲惨で溢れている それらを表現で... 続きをみる

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  • 救いなく笑い声が聞こえる

    過去があまりに惨めだから 体のいい物語にして嘘をでっちあげる 主人公が美女ならば 屑にだまされた醜い愚か者は 罪な男に翻弄された悲劇のヒロインに そのためならば 顔でも体でも切り刻んで 私の顔に残った縫い傷は 過去を捏造しようとして失敗した証 何もなかったように奇麗な顔で 澄まして生き直そうとした... 続きをみる

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  • 傷口に皮膚を

    俺はの、三人以上の世界をつくりたくないんだ 三人集まると、話が周りに漏れる 結婚している時、かみさんを女と思えないと友人に愚痴って それがかみさんに伝わり離婚のきっかけになった 離婚によってあなたは親権を失い自殺志願になった 外部との接触を遮断した私はすっかり洗脳されて 上から目線の同情心を 私だ... 続きをみる

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  • 舟出

    夕陽に向かって 人生の岸辺を 小舟で出発しようとしている 漕ぎ方もわからずに 離れていく地に未練を残したまま 波はとても穏やかだ けれど小舟をあちら側へと運んでいく 少しずつ 確実に 振り返る私を乗せたまま 色々あったと笑いながら水面を眺めるにはまだ若く 他の生き方もあったはずだと呪ってもいる人生... 続きをみる

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  • 偽善者

    誰にも愛されなかったなんて あなたの胸に投げた 世間知らずの独りよがりに 憎しみが過ったの? 私を心配してるふりをして 寄り添う味方を装った 悪人のようにあなたを 周りは誰しもみなした いたいけな君を騙してるみたい 俺を悪者のにしやがってと 忌々しげに爪を噛む 傷ついてくあなたの側面に 無責任にか... 続きをみる

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  • 今夜もリフレイン

    好きな歌をただ流し続けた 話すことが何もなくて はるかに大人の微笑みを浮かべているあなたに 伝えること わかってほしいことなんて思い浮かばなかった 狭いワンルームで並んで座って PCから流れる歌を二人いつまでも聞き続けた 歯ブラシを買えば頭を撫でて バスタオルを買えば優しく笑った カレーをつくれば... 続きをみる

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  • 詩を探して

    自分のなかに何かないかと 胸のなかに手を突っ込む へどろであれ 砂金であれ 灰かダイアモンドであれ 書くに値する 何かを探して 自分の経験のなかに何かないかと 頭のなかを手でかき回す 未熟さであれ 成熟であれ 夢か陳腐か退廃であれ 詩になりうる 何かを探して 何もない何もない何もない…… そこにあ... 続きをみる

  • あけましておめでとう 涙をこめて

    涙が頬をつたう 私は今日も泣いている 泣いているのはいつもと違う理由 SNSに投稿された友人の正月写真が 20年以上の時を経て変わらず美しかったから 私より4つ上の彼女 肌の白さや髪の色、質は変わらないくらい 背格好も似ている けれど写真に写る彼女は私とはまるで違う ハワイでお気に入りの赤いゆった... 続きをみる

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  • 謝罪

    濁った頭で来年の抱負を誓う 「詩」を書く 日記や思いの垂れ流しではなく 「詩」が何かわかっていない 「ユリイカ」や「詩と思想」や「現代詩手帖」を買い 図書館で有名詩人の詩集を借りる 藁でもつかむように半ば溺れながらそれらを掴もうとしている わかるようになるには 何かを掴むには 来年だけでは足りない... 続きをみる

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  • また同じ話 夜毎の涙

    あなたに去られたのは 心の傷が引き起こす問題行動などではなく 単に「使えない」からだった 「自分で自分のこともできんだろ」とあなたは言った 現実的なその言葉に私は打ちのめされた それまでの十年、精神的に救われることだけを考えていたから 周りから見れば「やることやってくれればいいのに」 地味で冴えな... 続きをみる

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  • 呟き

    書くことは己の無知を曝け出すことに他ならない ならばなぜ書きたがる 業などというものは持ちあわせていない 私を書かせるものはくだらない承認欲求と虚無感を満たすため それゆえに書けば書くほど惨めさが募る夜

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  • 迷い

    私の身に起こったことが20年の時を経て社会問題だと気づき 声を上げ共感してくれるフォロワーさんが増えました 連日流れてくるTLの性暴力に関するリベラルな投稿に 勇気をもらい強気になり自ら発信するように けれどもそれも一年経つと疲れてしまいました 人間の性根はごまかせないものです 知的能力も フェミ... 続きをみる

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  • 軽蔑すべき本音

    差しだされた腕は 初めて男の人に与えられたなにげない仕草で すんなりと頭を載せて 悪い夢でうなされた私を あなたは軽く声をかけて起こし そのあざとさの感じられない態度に 幾度も男の人に酷い仕打ちを受けてきた教訓を忘れて このままあなたの腕といわず人生に私を預けたいと 自分の人生を私自身をあなたに依... 続きをみる

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  • 無力

    煙草の煙が図書館の喫煙室に臭いをこもらせている 長椅子に腰かけ時間を潰す私の横に ホームレスのような身なりの高齢の男性がしゃがみこむ ぽつりぽつりとかろうじて聞き取れる小さな声で 男性はうつむいたまま喋り出す わしな、土方をしとったんじゃ 若いのはあかんねん、女はええんやで けど男はな、集団でやら... 続きをみる

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  • 犬のように

    生まれつきもてる才能を備えたあなたに 会うたびにのめりこんでいくのは当然のことでした どこまでもナンセンスな趣味を持つ私は あなたの甘い声と色気と端正な顔と女あしらいのうまさと なおかつ普通の勤め人という肩書きに 安心して飛び込んでいくことができたのです 子供の頃から少女漫画ばかり読んでいた 映画... 続きをみる

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  • 30年ー後半ー

    詩という言い訳のもとに思いを吐きつくして ようやく現実に帰る 醜形恐怖で鏡を見れない30年 突然老眼鏡をかけてじっと洗面台を見る 水回りの汚さが目に飛び込んできた 皺だらけの顔や毛穴、しみを残酷に映し出す鏡 私の残酷な真実より鏡の汚れに呆然として 詩は排泄物だと講師が言った 空っぽになるまで吐いて... 続きをみる

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  • 観念

    ひとしきり胸の内を吐き出して 冷静になって自分の顔を鏡で見る 整形してつくった二重の幅が いつのまにか加齢で狭くなっている 笑えば目尻に下瞼に眉間におでこに 無数の皺が刻まれる 大きく笑えば頬を長い皺が縦に走り 無表情になれば頬の肉がぶらさがって 葛藤と孤独と惨めさにまみれて 女と呼べる時期をどぶ... 続きをみる

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  • 一瞬の永遠

    数万年もしないうちに人類は滅びる 数億年もしないうちに地球は滅びる だから生きる意味などないとある人は言う いいえ意味を求めるなどせんないこと 未来永劫続くのを求めるなど 望んだのは あなたといたあの一瞬を死に果てるまで 生きる恐怖 死の恐怖 正気になれば足元に広がる真っ暗な深い穴を 覗かないで気... 続きをみる

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  • 崩れる

    嫌われるより辛いのは笑われること 笑われるより怖いのは怒らせること 頭が弱く鈍くさいゆえいつも怯えて ギャンブルのように整形を繰り返し 普通より奇麗と言われだした矢先に 見知らぬ男により脆い自信は崩れた それから誰も相手にしなくなるまで 色んな人を渡り歩いたいい人悪い人 楽しかったことなどない傷つ... 続きをみる

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  • わたし一人

    カーテンの隙間から空が暗くなっていくのを眺めている 薬を二百錠飲んで三日間眠っていたせいでぼんやりした頭で 手首には無数の切り傷が走っている 安全ガードつきのカミソリで引っ掻くように切った表面だけの傷 彼からのメールをチェックする 「薬を飲むなんて、もっといい人だと思いたかった」 振られたショック... 続きをみる

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  • 思い出にかわるゴミ

    古い傷を整理できず溜め込み 私の脳みそはゴミ箱のようだ ごちゃごちゃして混乱してる 悲しい辛い記憶ばかりだけが ゴミ箱に投げ込まれ目立って それらをいちいち取り出して しげしげと複雑な目つきをし 悲しい恨めしい顔で見つめる そんなものを捨てるどころか 大事に畳んでしまい直すんだ どうしてそんなこと... 続きをみる

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  • 鉛のような夜

    いつの間にか眠っていて夜中に目覚めた どうしてこんなに憂鬱な気分なのか 体が鉛のようにどんよりと重い すべてが絶望的な気持ちになる 過去が胸を去来する うまくいったことなんか何もなかった あれもこれも、これからだって…… なのにどうして未来がよくなるんだ? 利口になれず歳をとるばかりで 「君はこの... 続きをみる

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  • 足下で崩れ落ちる床

    歩いていくそのそばから床が崩れ堕ちていく 私は屈んで廊下の電気をつける 床は少しも損なわれていなかった 不眠三日目の幻覚か 電気を消すとまた足元の床が崩れてしまいそうで おそるおそる歩を進めた 電気を消してベッドに横たわると 天井に蛍光緑の大きな我が 開高緑の液体を吐き出していた 電気をつけると消... 続きをみる

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  • 若気の至り

    君は自分の不幸を売り物にするけど、臓器を売られるために生まれてくる子供だっているんだぞ 私の何気ない一言にあいつは声を荒げていた 愚痴をこぼしているつもりの私は過剰反応だとうんざり あいつはそれまで見たり聞いたりしたものと比べて苛立ったのだろう その女友達が「あの人の子供時代の話を聞いたら泣くで」... 続きをみる

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  • 振り返る

    笑われるのも好き勝手言われるのも 自嘲して流す術でやってきた ふられるのも蹂躙を受けたのも こんな私だから仕方ないと 自らを欺いて自らに向き合わず そのままの状態であなたを好きになってしまった ひどく傷ついているのだけは知っていた その傷をあなたになすりつけようとして そうして救われようとした自分... 続きをみる

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  • 心は血まみれ

    傷を負った心は さらに傷を必要とする 「あんなの、大したことじゃなかったわ」と思うために 同じ痛みを再現して強がるのだ 血を流す心は さらに血をだらだら流す 当人は自分の心に向き合わないから気がつかない 再体験で傷口から血まみれなのに 手負いの虎のように

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  • 必要な人

    「千代子なんかなあ、十錠飲んだら死ぬ薬を飲んでたんだぞ!」 軽い安定剤を大事そうに扱う私に、彼は喚く こうも言い足す 「ふん、デパスくらいで!俺なんか!」 『俺なんか』 彼が離婚で親権を獲られ、自殺志願になって、それから…… 「俺のとこで買ったら激安なんだ。でもSさん、俺が自殺したがってたの知って... 続きをみる

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  • 悪あがき

    私の告白を受け流すあなたの 微笑みは温かみがあるだけ寒くて 間をおかず体を求める 愛の不在に気持ちは離れる しがみついた夢が消えていく あなたとの描いた夢消えるよ 過去をパンドラの箱にしまえれば 独りで呑み込んでいられたら あなたが傷を受け止めてくれたら いつまでも一緒にいられた 声に出した秘密が... 続きをみる

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  • 罪深き夢

    あんな記憶を引きずって 生かされているなんて思うことはできない 彼は楔を打ち込んだ 忌まわしい傷をうちあけた私に 別れを 「自分で自分のこともできないだろう」 頭の弱さを理由にでっちあげて 私が鬱陶しいだけなのを正当化した あなたの腕枕で見た悪夢から 私を揺り起こしてくれた あの夜と まるで違う人... 続きをみる

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  • 二重へのこだわり

    整形二重が崩れていく 瞼が弛んでメスで刻んだ二重のラインが見えなくなる アイプチをしても瞼の皮膚が伸びているので効果がない それでも藁にもすがる思いでアイプチの液体で二重をなぞる 液体が目に入り水で洗い流す 焦りにも似た 重い瞼に押し潰された細い目に戻っていく恐怖 生まれつき目は糸のように細かった... 続きをみる

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  • すべてが終わったあとで

    すべてが通り過ぎたあとで 真実を理解して哄笑が溢れ出る 彼は私を愛してなかったが それどころか彼は私を馬鹿に 同棲していた女が心を病んで それで彼は私のもとに来た 私への仕打ちは酷いもので けれどその女にも そんなものだったのだろうと ある日私は人づてに知る 彼が「もう死んでくるわ」と 女と心中し... 続きをみる

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  • 堕ちていく

    彼の停めたベンツを追い越して、白のクラウンがキッと止まる。 彼は黙って左ハンドルの運転席を下りて外に出る。 Sさんがスーツのポケットに突っ込んでいた手でそのドアを開ける。 品物を見定めるような目つきで私を見る。 私はとっさに精一杯の笑顔を浮かべた。 「〇と申します。私まだよくわからなくて……よろし... 続きをみる

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  • 愛を乞う彼

    美貌だった。とても美しい人だった。カオリという、彼が引き合わせた本命の女は しっかりしてた。人間のできた人だった。ユウコという、彼が付きあってた女は とにかく優しかった。子供を奪われたシノブという、彼を好きだという浮気相手は 「カオリみたいな奇麗な子が、前は男に貢いでたんだぜ」 「惚れたっていうの... 続きをみる

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  • ある夜の思い出

    「俺の女どもに、自分が一番よ  自分が一番可愛がってもらってるのよって吹聴しやがって」 酒臭い息を吹きかけながら男が絡む 涙がポロポロ頬を伝う おいで、と忍ちゃんが 私の首に手をまわして スカート越しに 正座した脚の太腿のあたりに寄せ 泣いてうつ伏す私の背中を撫でた 「帰って。今どんな状態がわかっ... 続きをみる

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  • 理由

    こんな風に自分を晒して こんな風に傷口を開いて 私は何がしたいの 自分を虐めたいの 違う 私は書くことで 書きながら探してるの 過去に固執するそのわけを 喋らなければ 書かなければ 誰も知ることはないし 知りたくもない なのになぜ書く? 幾人かの過ぎ去っていった人々 彼か彼女らについて詳しいわけじ... 続きをみる

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  • Yes

    「いつ死んでも同じ。死ぬ時は一緒に死のう」 私の知らないたくさんの汚いものを見て 私に教えないたくさんの汚いことをした あなたはつまらなそうな顔でハンドルを握りながら言う 一度の性的蹂躙で壊れた私はその言葉で男にすがりつく あなたの知らないたくさんの奇麗なものを見て あなたに言わないたくさんの奇麗... 続きをみる

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  • おやすみなさい、子供たち

    「若い男にとっちゃ遊びに決まってるだろ、あいつには子供がいるんだぜ」 声を荒げてそう言うと、彼は伏した私を上から抱きしめる 「なあ、俺だって色々あったんだよ、わかってよ……」 無言で瞼を閉じて片頬をカーペットにつける 彼の「男の子と女の子」は、あの男の子供達の連想へとつながっていく。 あの男。堕落... 続きをみる

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  • 卑怯な恋

    ひらり、と紙が宙に舞い落ちる 拾い上げてもう一度復唱する 「昨日あなたと私の赤ちゃんが死にました  あなたが私の所に帰ってくれた時は本当に嬉しかったけど  このままだとまたお互いに悪くなるから別れましょう  桜子ちゃんを忘れないでね」 笑いたい笑えない 彼の彼女が残していった置き手紙 彼の女友達の... 続きをみる

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  • 犠牲

    男が耳にあてた携帯電話の受話口から、女が男の名前を呼ぶ。 ……君。息も絶え絶え、と言った風に。 焦ったような怯えたような顔をして、男は早口で捲し立てる。 「〇子、もう出てくるな。自分がどうして34キロまで痩せたか考えてみろ。仕事と俺と、両方うまくやろうとして、それで痩せたんだろうが」 プツッと電話... 続きをみる

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  • 忘却

    時間というのは不思議なものだ あの夏の朝の陵辱の生々しい記憶を それにより生じた心の隙につけこんだ男の仕打ちを 忘れようとせずとも私の中から少しずつ消し去っていく そして20年経った今、こうしてすらすらと書いている 痛みもなく書ける瞬間があるのだ あの夏から10年に渡り私は記憶に支配されていた ど... 続きをみる

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  • 12月

    冬桜が咲いている 昼下がりの植物園 池は紅葉の水鏡に 燃える赤を映して もうすぐクリスマス 電話がかかってきて 甥や姪への贈り物を 要求され苦笑いする おかげで私は過去から 現実へ我に返ってくる 地下街を歩いて買い物 あれこれ迷う身内の為 毎年この季節に思い知る 子供達が成長していると 私は過去に... 続きをみる

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  • たとえ自滅しようとも

    わかってもらえるなんて、どうして期待したのだろう 「男はね、女の浮気は許さないよ。独占欲があるからね」 最初の頃にあの人は睨みつけるようにして釘をさした そんな人が、どうして私の過去を許すとでも? 自分を傷つけずにはいられなかった どうしようもなかったんだ、そんな訴えに耳を貸すと? 昔、まだ何も知... 続きをみる

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  • 失恋一人芝居

    ワンルームマンションが広く感じる 正方形の部屋の片側のエアマットレスで 膝を抱えて猫背で窓から陰っていく空を眺めている 色んなことが思い出されるよ 若い頃悪い男に酷い目に遭わされたのを帳消しにできるほど できると思ったんだ あなたとなら過去はなかったことにできると思ったんだよ だから信頼するパート... 続きをみる

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  • テーブル椅子のぬいぐるみ

    告白をしたのは 夜中に感傷的になったからだと あなたが受け流した瞬間の 私の気持ちがどんなものだったか わからないでしょう リビングには大きなぬいぐるみ 腕枕に頭を乗せながら あなたが笑って流した時の顔と 「ああ、このぬいぐるみはあいつの……」 いや、違うな、と口をつぐんだ顔を思い浮かべてる 気分... 続きをみる

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  • 意地悪な気持ち

    彼と私が喋り出すとうつむいて 美女でもないのに奇麗に涙を流し 女優でもないのに奇麗に涙を拭く そして健気にニコニコ笑っている ずっとニコニコニコニコ  機械みたいに その笑顔に意地悪な気持ちが湧いた19歳の春 あんなに器用に笑えない 奇麗じゃないのに人前で泣けない 崩れた顔は無様で笑われるだけ な... 続きをみる

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  • 罪はどこまでも深く

    Sさんが、Sさんが 熱に浮かれたように、あなたが言う Sさん、二千円しか持ってないのに饅頭買って俺と分けたんだぜ あの頃は俺金持ってて、楽しかったなあ 車のフロントガラス越しの空を 夢見るように微笑みながら、あなたは見上げる 女を惹きつけるためのあざとい演技から離れた眼差しで 普段現れないあなたが... 続きをみる

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  • この歳になって

    この歳になって誰かに見られたいわけじゃない ただ気持ちを吐き出したいだけなんだ それなら日記でもかまわないはず そうだ私にもわからない きっと露悪趣味的な何かなんだろう 曝け出して同情を買うか下劣な奴 いやそうじゃない この歳になって同情されたいなんてことはない まだ誰かわかってくれるなんて期待を... 続きをみる

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  • お願い

    ママ パパとお別れする前は朝起きてくることはなかったのに どうして新しいパパのためなら起きてご飯をつくれるの パパ パパはとってもハンサムだったけどママはパパ嫌いって どうしてママがいるのに新しい女の人のとこ行くのって ママ パパ 私もうどっちの話も気持ち悪くて聞きたくない気づいて 私もう子供じゃ... 続きをみる

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  • 虚ろな嫉妬

    赤い唇が笑っている スマートフォンを眺めながら、オーバーリップ気味の唇が 時折歪みながら笑っている なにもない白い肌 電車でよく見かける類の若い女に胸がチクリと痛む 私を切り捨てたあなたの娘を重ねあわせて 後にも先にもカミングアウトした恋人はあなただけ 軽くあしらわれたあのショックは あなたへの失... 続きをみる

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  • 恋愛試合

    自分の女を私に引き合わせるの これが3人目ね とどめがとんでもない美女だったこと あなたはきっと計算ずくで 病気で死を宣告され離婚されたがゆえに人の痛みがわかる女 子供二人を抱えて離婚しても生活のためにたくましい女 それで私はあなたに気を許した 善意で私が良くなるように他の女を引き合わせたんだって... 続きをみる

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  • 今日は死ぬのに最適な一日

    ……ずっと昔、私がまだ若かった頃、なしくずし的に一緒にいた男に本命の彼女を紹介されたことがある……男の上司とも関係のあった女の人だが、離婚して二人の子供を抱えて昼は会社勤め、週末の夜はクラブでコンパニオンをして生活していた。 「お客さんは靴見るよ。これあげるわ」 彼女は住んでいる団地の玄関脇のシュ... 続きをみる

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  • 忘れない

    あの夏 自分をコントロールできなくなった私は 普段知り合うはずのない男とつきあい 誘われるがままにどこまでもついていった やや高級なマンションの一室につれていかれ そこには部屋の持ち主の忍ちゃんがいた 忍ちゃんは血小板が減って28歳のその時に 35歳までに死ぬ病気とやらで 子供を取られ離婚され、慰... 続きをみる

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  • ほんのひととき 罵声と哄笑の飛び交う頭を休め 夢を見ていた 傷つかないという、 それ自体が手を叩いて笑いを呼ぶような 感傷的な夢を

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  • 幽霊

    ステージのエアコンがバチバチと鳴っている 鉛筆ビルのカラオケボックスの外壁が わずかな隙間を隔てて建つ隣のビル越しに 巨大なものにどつかれたように ガン、と大きな音を立てた 足元の床が 階下から洗濯竿で突き上げられたように ガン、と鋭く鳴って揺れる トモダチがニタニタ笑っている 猫を連想させる瞳が... 続きをみる

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  • 美しい友人

    麗しい友よ あなたの髪は栗色で柔らかでうねることなくまっすぐだ あなたの肌はしみひとつなく透き通っていた よどみなく美しい日本語を操り 品のある佇まいをして 私はどれだけあなたを崇拝していただろう あなたにへつらう私に、あなたはメールをよこした 「初めて見た時、ソフトで女らしい顔だと思ったよ   ... 続きをみる

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  • 愚かな灰かぶり

    灰かぶり姫は猫をかぶって 好機をうかがっていました 見初められる夢を見ていた 誰かにただそれだけでした ヒソヒソと囁き指さされる 体の痣をメスで切り取って 目が細いと笑われるならば 二重のラインをメスで刻み 大きな鷲鼻をけなされれば ノミで段を削り小鼻縮小し ガスレーザーで黒子を焼き やれることは... 続きをみる

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  • トモダチ

    ようやったと思うで 笑ってるような泣いてるような顔で トモダチは言う 借金 子供 女 身内 すべてに嫌気がさして アパートの四階からトモダチの兄は飛び降りた 返す言葉に戸惑う 優しいから困ったように振舞ってみせる けれどどうでもいいと思ってる自分がいる 人の気持ちなんてそんなもの それから自然消滅... 続きをみる

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  • サイレンと骨

    真夏の盛り けたたましくサイレンが鳴り響く 子供だった私は机の下に潜り 一分間の黙祷どころではなく 激しく迫るサイレンの音に ヘリコプターの音が重なると 落ちる 爆弾が落ちると 耳を塞ぎ瞼をギュッと閉じた 学校の近くにある団地の一角が 家賃が安いと同級生が言う 幽霊が出るからと しかし実際に幽霊を... 続きをみる

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  • 窓越しに 旅先にて

    飛行機窓から覗く街並みが 模型のように粒状になり遠ざかる 堕ちたら死ぬという高みを過ぎて ちぎれ雲が現れ それは足跡のない早朝の雪景色や 真っ青な空に次々と姿を変えていく なんて表情の豊かな空 降り立った地を車で走る どこまでも続く道の脇に白樺が 一糸まとわぬ姿で屹立している 黄、茶、緑のグラデー... 続きをみる

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  • 男は支離滅裂に自滅する

    「三日が百日にも思えたことがある?」 ベンツの左ハンドルで夢見るような目つきで彼はフロントガラスの向こうを見つめる 助手席で私は生理的嫌悪感を抱きながら彼に視線を走らせる 芝居がかっていてあざといから きっとバブルの頃ホストだった時に身に着けた女を落とすテクニック 「俺、貯金ゼロのお客から500万... 続きをみる

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  • オレンジと甘エビ

    旅先の地の すでに冬のごとく冷たく澄んだ空にかかる クレーン車のオレンジが鮮やかに この目に映る 昼食の甘エビは甘く舌を驚かせた 長いあいだ 街も人も映る景色は砂画面 SSサイズの体で食べるものは味のしないガムのよう 帰ってきた私の感受性 おかえりなさい

  • 「自分で自分のことも出来んやろ」 そう言ってあなたは去り際に 私の心に刺さって取れない 小さな棘を残していきました 愛のかわりに信頼が残っていたので あなたのその捨て台詞で 私の心に永遠に鍵がかけられたのです

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  • my lot soul

    「絵は魂だ」と映画の台詞 詩も多分同じ 魂が入っていなければ ただの言葉の羅列 私の魂はおそらく空っぽだ 何処にあるかもわからない 医者は脳の視床下部にあるという 作家はお腹のあたりにあるという 魂の在処も知らないのに 空虚な魂の存在を漠然と感じる それでも書き続けよう いつか言葉は歌に変わるだろ... 続きをみる

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  • 井戸の底から(私の魂より)

    暗い 冷たい水が口の中まで入ってきて 沈むまいと手足をばたつかせる ふいに頭上高く 陽の光で明かるく切り取られたような円の縁で 女の顔がこっちを覗き込んでいる じっと複雑、悲し気な顔をして 助けて、と水を吐きながら叫んでも答えない 去っていく あの円から……昔私をあそこから投げ入れた女が お前は邪... 続きをみる

  • 井戸の底(現在から)

    心に井戸を掘って記憶を沈めた それから20年 見たの 見たの 井戸の縁からそっと底を 暗闇にまぎれて 若き日の私がいた 殺した殺されたはずの魂が それからおよそ10年におよぶ自暴自棄の時を どろりとした井戸の底の腐った水に 足をとられて もがいてる あがいてる 独りで空を掴もうとして手を伸ばしてる... 続きをみる

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  • ミエミエノユメ

    「あいつには子供がいるんだぜ。なのに若い男を家に入れてるんだ」 ヤメテ ナマナマシイハナシヲシナイデ ワカレタオクサンヲ アイツナンテヨバナイデ 「あいつは子供が嫌いだったんだな。自分の子供だから、まだ……」 ヤメテ アナタノコドモダカラウンダト ソウイイタイノ ヒトリゴト キカセテイルノ 「子供... 続きをみる

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  • Changing game

    好奇心は命取りだ 最初はただのホスト崩れだった 知らない男に「魂を殺された」抜け殻の私が 誰も信じられなくて 野良犬を拾うように 飼ったつもりのろくでなし 私のマンションで三日ぶりにシャワーを浴びて 車中生活を送っていた男を部屋に住まわせ 下手くそなカレーと下手くそなアイロンがけ 芝居だとわかって... 続きをみる

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  • 私の世界

    私の世界は、私の体験と感情の記憶とほんの僅かの想像力でできている そこから出たことはないし 出たと言い張るのは、知識の武装集団だろう よって私の世界は、哀と怒り憎しみで踏み固められていくばかり 雨がよく降る 涙と血と唾で濁った水滴が あなたの世界が向こうに広がる 私の世界のガラス窓を曇らせる すで... 続きをみる

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  • 予言

    君みたいな子でね 君に似ててね 高そうな深いボルドーのゴルフウェアを着ながら 男は私をベッドの縁に座らせて  穏やかに 女の子にするように 優しく語り掛ける 出会った時にはもう30歳を過ぎていてね ガリガリで 何この子と思った 君みたいにね 話を聞いたら 好きだった男に振られて結婚しないと 毎日ビ... 続きをみる

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  • 蚊を飼う

    蚊を叩いたにすぎないと 私を切り捨てた あの人は ネットを見ているのを想定して書いた 暖かな血は冷えて体内を流れず 胸のあたりはギュッと筋肉が収縮する 頭は混乱して靄がかかり思考停止だ これがあの人の本音 それがあの人の見た私 「蚊を叩いた」 それは私の引き攣った頬を叩いた 緊張で固くなった胸が微... 続きをみる

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  • トラウマごっこ

    ねえ 笑っていないで 唇の片端上げる癖やめて プロジェクター消して ライブコンサートなんて 私が消えるの いなくなるかもしれないわ ねえ 怖い顔しないで 二の腕が傷のかさぶたで 血が滲んでも怒らないで 笑える話なの泣かないで 薬を飲んだの 死んでしまうかもしれない ねえ 比べたらいけない 捨てた女... 続きをみる

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  • トラウマごっこ

    ねえ 笑っていないで 唇の片端上げる癖やめて プロジェクター消して ライブコンサートなんて 私が消えるの いなくなるかもしれないわ ねえ 怖い顔しないで 二の腕が傷のかさぶたで 血が滲んでも怒らないで 笑える話なの泣かないで 薬を飲んだの 死んでしまうかもしれない ねえ 比べたらいけない 捨てた女... 続きをみる

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  • 逃げたら追う、それは感情

    私から逃げ出したかった どこまで歩いても走っても 思いつくすべてを試みても 私は私の中に閉じ込められ その向こうにいつだって 恐怖と不安と絶望を見てた ある夏の朝、ふいになされた 私に対する理不尽な蹂躙 事後いつも心は焦って 早く早く早く逃げて逃げて どこか安全な場所へここから あなたから どうし... 続きをみる

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  • 愛情乞食

    誰かに汚された私が ふらついた足取りで 貴方に辿りつこうとしている 誰をも愛してない私が 怯え震え怖がりながら 貴方の腕を離すまいとしている お願いどうか 私を愛して下さい

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  • 自己欺瞞

    うねる髪は伸ばさないことでごまかしてきた 細い目は二重にしたら黒目がちで錯覚できた 鷲鼻は段の骨を削ると土台よく綺麗になれた 歳なのは独りでさえいれば自覚せずいられる なんでもしよう 愛せない自分と 向き合わない為

  • 野苺

    幼い春 小山の頂きにあるマンションから麓まで 草々で覆われた山肌の斜面に野苺 薄い赤 子供の指先で軽く摘まんで 棘が生えていた 薔薇にはおよばず 薄い味 勢いよく駆け下りていく緑踏んで たんぽぽ摘んで 綿の実拭いて 白いふわふわがどこかに飛んでいくよ 大人の夏 体育館のステージの緞帳のような暗く重... 続きをみる

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  • 心の小さな窪み

    ……昔、私を好きだと言ってくれた男の子がいる サッカーが好きで、勉強ができて、できずぎるほどでなく 学校で有名なイケメンだった 「Mの女」 私はそう呼ばれていた  教室で 廊下で すれ違いざまに 振り返られ 時に噂された 当てつけにクスクスと笑われを繰り返した 「あの女が、あいつの?」 実際には私... 続きをみる

  • ショートカット(痣)

    腰の痣をメスで切り取る 麻酔の切れた状態で十数針、布団針を刺されるような痛みがささる 額や背中もびっしょりな私の頭から 医師が白いシーツを放るようにしてかぶせる 砂利のように嫌悪を悪意を投げつけられた 物心ついた頃には 幼稚園のビニールプールで 40年前 パンツだけを履いた子供達の群れのなか 汚い... 続きをみる

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  • 後悔

    反応があって怯えてブログごと詩を削除する 数十個の詩が消えてホッとする 私の過去が凝縮された日記 詩情などなく 詩の痕跡をとどめず なのになぜか 「読者がついた」と通知がきて 削除されていなかった喜びに いそいそと詩を書き 削除された 削除してほしかったはずの 嘔吐しそうな過去の塊 詩を探す 愛お... 続きをみる

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  • 術後

    「トップシークレット、あいつ、やったんだってよって、二重にしたの有名だよ」 学食でランチを食べながら、クラスメイトがさばさばとした口調で言う 長テーブルを囲んで向き合う私達の脇に、小さな女が現れた。 「山本、やったん?」 大きな声を張り上げ、女が両手をあげる。 「アイプチ」 私が怒鳴ると、女は舌打... 続きをみる

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  • 瞼の向こう

    瞼を眼球の間に、薄いアルミ板が奥までゆっくりと差し込まれていく 声も出ない痛みに、医師や看護婦の姿もかすむ 額には汗がびっしょりだ 眼球に麻酔の針が刺される ようやくして感覚をなくした瞼に手術が施される この重い瞼が二重になってすっきりするなんて そんなことがこの後待ち受けているんだろうか? 私の... 続きをみる

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  • 白い炎

    炭酸ガスレーザーの先から 青白い炎がライターと同じ形をして燃えている 医師は躊躇なく 私の顔の皮膚に炎をあてていく 麻酔もせずに 無数に広がる、 頬や唇の周りに1,2ミリの黒子の 痛覚を麻痺させる手間は面倒だ 黒子を焼くとて瞬時のこと 額に汗して私は天井をじっと見つめる 上唇の傍にある黒子がジュっ... 続きをみる

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