月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

望むように

地方から出てきたおぼこい親友は
「私はね、気分よく暮らしたいだけなんだよ。景色のいい所で、パン屋さんで働いて」
その夢を叶えるべく
大学生になって夜はスナックで働き卒業までに500万円を貯め
海外を転々としたあげく
40歳を前にエジプト人と結婚し男の子をもうけた
Brave eyesと呼ばれる強い目をして
私と友達はともに瞼を二重に整形しても細く腫れぼったい目で
「私ね、顔のいい人が好きなんだよ」と言っていた友達の
旦那さんの顔を見に行く前に「アラブの春」が起きた


けれど友達は逞しく生き生きと望むような選択をした
子供の両肩を後ろから手でつかんで明るい笑顔を浮かべるお母さんになった
イスラム教に改宗して 白い布であつらえた民族衣装を身にまとって
夢は叶えるもの 人生は楽しむもの
晴れ晴れとした笑顔の画像に屈託はない


対して私は傷つかないこと、無事で安全に暮らすこと それが人生というもので
夢はなく 男の人を好きにならず 
私 あなたが 羨ましかった
望むように生きて 欲しいものは手にいれて
好きに生きていいのだとあなたを通してそんな生き方もあるのだと


亀のように硬い甲羅に身をひそめ
野良犬のように人間に怯え
無事に死に逃げすることだけを願う私にとって
あなたは夢でした