月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

捨て台詞

「自分で自分のこともできんやろ」
あなたの別れる理由に用いた言葉は
率直で耐えかねた末のものだから私を傷つけ
さりげなく自分を悪者にしないための詭弁だから二重に私を傷つけた


けれどもう「男が悪者の役を引き受ける」のは時代遅れの世の中なのでしょう


私はといえば
バブル世代の隅っこで
不景気になっても「女は顔」「専業主婦」という幻想を捨てきれなかった
そのために
言いたいことは言わず 奇麗な服や整形手術代を手に入れるために
ネズミのようにコソコソと地面を這いずり回って


奇妙なのは
私を蹂躙したあの見知らぬ男の件より
弱り切った私につけこみモノ扱いして体も金も搾取しようとした男より
堅気でまっとうに生きて、私を小さな女の子のように扱ってくれたあなたの
「自分で自分のこともできんやろ」という捨て台詞が
十年経っても頭から離れず
脳裏を過る度立ってはいられずベッドになだれ込むほどの破壊力を与えたことです
蹂躙されても恥じることはない
搾取されたことなど若い女には珍しいことではない
けれど私を人として扱ってくれ、時には子供のように接してくれたあなたから出た
「自分で自分のこともできない」という「破門状」は
まるで世間から社会から正式文書で申し渡されたように
私の体や頭に焼き鏝で刻印されたのです


それでも十年前ですからいつか忘れて元気になると思っていました
けれど年々私の気力体力は失われ、暗闇でベッドの中で
その言葉は鎖となって私の体を縛り付け
重い鉛となってのしかかるばかり