月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

振り返る

笑われるのも好き勝手言われるのも
自嘲して流す術でやってきた
ふられるのも蹂躙を受けたのも
こんな私だから仕方ないと


自らを欺いて自らに向き合わず
そのままの状態であなたを好きになってしまった
ひどく傷ついているのだけは知っていた
その傷をあなたになすりつけようとして
そうして救われようとした自分もわからずに


恋が解決してくれるなんてどうして思ったのだろう
あなたも自分のことで精いっぱいだったのに
年上らしく子持ちらしく大人ぶって接していたあなたの
私への本心に気づこうともしなかった


ふられた理由を
外見と頭の弱さのせいにしてあなたを薄情だと恨んだ
それはとても簡単だから
真実はどうだったのだろう
ひょっとしたらあなたは私より私を理解してたんじゃないか
そんな風に思うあなたの年齢を超えた今になって


せめて大人ぶってあなたの幸せを願おう
ごめんねと心の中で呟くのはまだ嘘くさいから

心は血まみれ

傷を負った心は
さらに傷を必要とする
「あんなの、大したことじゃなかったわ」と思うために
同じ痛みを再現して強がるのだ


血を流す心は
さらに血をだらだら流す
当人は自分の心に向き合わないから気がつかない
再体験で傷口から血まみれなのに


手負いの虎のように

必要な人

「千代子なんかなあ、十錠飲んだら死ぬ薬を飲んでたんだぞ!」
軽い安定剤を大事そうに扱う私に、彼は喚く
こうも言い足す
「ふん、デパスくらいで!俺なんか!」


『俺なんか』
彼が離婚で親権を獲られ、自殺志願になって、それから……
「俺のとこで買ったら激安なんだ。でもSさん、俺が自殺したがってたの知ってるしな」
Sさんはあなたの命なんてなんとも思ってないと思うわ
すかさず飛んでくる罵声が怖くて、私は心の中で呟く
彼を社会の底辺に追いやったSさんが心配してると思うのは彼の願望か


それでも彼はぶくぶくと太っている
「今年に入って20キロ太った。千代子が俺を独占しようとして飯を食わせようとして」
もう病院に入って姿を消した彼女の名前を彼は口にする
彼の違法駐車でアパートを追いだされ、精神を病んだ女の名を


「千代子さあ」
ふと思い出してファーストフードで注文を待ちながら私の方を振り返る
「Sさんが千代子の飯美味い美味いって。お前も練習しろよ」


あなたは否定するかもしれないけど、わかっていますか
あなたは千代子に情が湧いているんです
Sさんに憧れて地獄の果てまでついていこうとするけれど
そうなるには情愛を必要とするほどに弱い
そのことに気がついていますか


「君はどこか千代子と似ている」
「千代子と同じこと言う」
「千代子も大学を出ていて」
元売れっ子ホストの手管で女には困らないあなたが繰り返し名を呟く


汚い世界で生きてる彼に
必要なのは彼女で離すべきではなかった
世界の美しい側面ばかり見て育った
私に彼の必要な人にはなれない


彼を切り捨てても
生きるに値する 生きるのは美しいと願う私は