月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

悪あがき

私の告白を受け流すあなたの
微笑みは温かみがあるだけ寒くて
間をおかず体を求める
愛の不在に気持ちは離れる


しがみついた夢が消えていく
あなたとの描いた夢消えるよ


過去をパンドラの箱にしまえれば
独りで呑み込んでいられたら
あなたが傷を受け止めてくれたら
いつまでも一緒にいられた


声に出した秘密が耳元に
聞こえて記憶が溢れだす
封印が解かれてとめどなく
私を知ろうとしないあなたがいる


甘い言葉を
真に受けてすがった
悪あがき 溺れてしまわないように
あなたを信じなければ
再びの絶望もなかった

罪深き夢

あんな記憶を引きずって
生かされているなんて思うことはできない


彼は楔を打ち込んだ
忌まわしい傷をうちあけた私に 別れを
「自分で自分のこともできないだろう」


頭の弱さを理由にでっちあげて
私が鬱陶しいだけなのを正当化した


あなたの腕枕で見た悪夢から
私を揺り起こしてくれた あの夜と
まるで違う人みたいに


幕切れはあっけなく


過去から引きあげてくれたあなた
過去の状態に突き落としたあなた


教えてよ これは独りよがりの罪深い夢だったの


悪夢から目覚めて
あなたとの現実を歩いていく夢を
握りしめていれば幸せだったのに

二重へのこだわり

整形二重が崩れていく
瞼が弛んでメスで刻んだ二重のラインが見えなくなる
アイプチをしても瞼の皮膚が伸びているので効果がない
それでも藁にもすがる思いでアイプチの液体で二重をなぞる
液体が目に入り水で洗い流す
焦りにも似た 重い瞼に押し潰された細い目に戻っていく恐怖


生まれつき目は糸のように細かった
物心ついた頃から
父親に笑いかけられたり無駄口を叩かれたおぼえはない
学校で有名なイケメンが私を好きだと公言して
「本当にあいつか?」と不信と嘲笑が渦巻き
その男は誰が見ても可愛い女のところに行った
すべては私の埴輪のような目と分厚い瞼のせいなのだと
整形ばかりを考えた十代だった


切開二重を頼みにいった有名な形成外科医は私を怒鳴りつけた
「芸能人やおかまの人は、顔で食べていくしかないんだ
 お前は普通の子だからしないでいいんじゃ!」
奇形や火傷、酷い怪我の跡の症例を見てきたゆえの台詞
それは正しい
けれど二十歳の私は、自分の傷を癒すのに精一杯で


いつかまた、私はぱっちり二重になるために整形するだろう
愛されたいからではない
自分を愛するためだ
醜い自分は愛せない 幾度整形しても愛せない私が
加齢による目元の崩れに耐えられるわけがない


整形なんて大したことではないのだ
けれど知っている
本当は止めてくれる男の人に愛されたかったことに
そんな人にただの一度も愛されなかった虚しさが
私を美醜へのこだわりに駆り立てることに