月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

下らない

書かなければと 心は焦る
性暴力 醜形恐怖 発達障害 失恋
すべてランキングの圏外にとうとう落ちた
それでも毎晩書かなければと 気持ちが急く
芸術家タイプでない偏差値至上主義だった私にとって
書くことは練習 毎日毎晩欠かしてはならない勉強


自分から目を離せば
世界は悲惨で溢れている
それらを表現できないのは
勉強不足 見識を持てない知性 それ以前の
己の売り物にしようとする不幸で一杯一杯の稚拙さゆえ


どこまでも「私」にしか興味が持てない
どうすればそこから抜け出すことができるのだろう
今日も私は眠っている 眠り続けている
外へと這い出て詩情を見いだそうという焦りを抱いたまま
殻にこもって泣いていたい欲望に身を委ねて

救いなく笑い声が聞こえる

過去があまりに惨めだから
体のいい物語にして嘘をでっちあげる


主人公が美女ならば
屑にだまされた醜い愚か者は
罪な男に翻弄された悲劇のヒロインに
そのためならば
顔でも体でも切り刻んで


私の顔に残った縫い傷は
過去を捏造しようとして失敗した証
何もなかったように奇麗な顔で
澄まして生き直そうとした私の
逃げようとして転倒した傷跡


違う人になろうだなんて
どうして不可能な夢を見たのだろう
どこまでも逃げて逃げて逃げ切れるなんて
自分自身からは逃げられないのに


奇麗は奇麗 醜いは醜い

傷口に皮膚を

俺はの、三人以上の世界をつくりたくないんだ
三人集まると、話が周りに漏れる
結婚している時、かみさんを女と思えないと友人に愚痴って
それがかみさんに伝わり離婚のきっかけになった


離婚によってあなたは親権を失い自殺志願になった
外部との接触を遮断した私はすっかり洗脳されて
上から目線の同情心を 私だけはあなたの味方だと


「俺のロボット」
携帯電話であなたは友人に私のことをそう言った
その頃にはすでにあなたしかいなくて
切り捨てられない私は プライドをなくした犬以下だった
犬ならばせめて 見返りのない愛があるでしょう


出口のない日々は
見かねた周囲の手助けによって ある日突然終わりを告げた
入れ替わり立ち替わり色んな人があなたの悪口を私に吹き込んで
愛という名の洗脳は いとも簡単に彼らの説得によって解けていった


あれから20年の月日が経ち
私はまだ覚えている 傷ついている
犬ならロボットなら あんな男を忘却の彼方に追いやられた
そうでないのは あなたが 私が 本音をぶつけすぎたから
騙すならいっそ 愛だの恋だの気障な台詞だけを並べ立ててくれればよかった


傷は骨まで達し 肉がついて 肉を覆う皮膚が再生するにはいたらない
剥き出しの肉を見る度に あなたの顔が 罵声が 優しさが蘇る
恨みはない 憎しみもない それらと軽蔑が混じり合えば楽になれるのに
肉の盛り上がった傷口は ただ虚しさを呼び起こす


誰か皮膚をください 傷が目について 眠れぬ夜のないように