月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

幽霊

ステージのエアコンがバチバチと鳴っている
鉛筆ビルのカラオケボックスの外壁が
わずかな隙間を隔てて建つ隣のビル越しに
巨大なものにどつかれたように
ガン、と大きな音を立てた
足元の床が
階下から洗濯竿で突き上げられたように
ガン、と鋭く鳴って揺れる


トモダチがニタニタ笑っている
猫を連想させる瞳が意地悪く光っている
「あんたの昔の男に惚れて狂った女の生霊がステージにおるわ」
「あんたにそっくりや。へえ、凄い因縁やなあ」
「あんた、気をつけや。あの女に半分引きずられてるで」


馬鹿にされていると気がつかないと
調子に乗っているトモダチ
いっぱしのプライドから友達を着信拒否すると
向こうからの幾度かの優しいメールのスルーのはてに
「私だって普通の家に生まれたかったのに」
私を引きずり落したいのはトモダチ
生霊じゃなくて生きた人間
人間の業