月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

虚ろな嫉妬

赤い唇が笑っている
スマートフォンを眺めながら、オーバーリップ気味の唇が
時折歪みながら笑っている
なにもない白い肌
電車でよく見かける類の若い女に胸がチクリと痛む
私を切り捨てたあなたの娘を重ねあわせて


後にも先にもカミングアウトした恋人はあなただけ
軽くあしらわれたあのショックは
あなたへの失望と不信を生んだ
それからしばらくもしないうちに私を捨てて
二重のショックで私の心にとどめを刺した


いともたやすく切り捨てられた
けれど「事後」で己の身を汚らしいと感じていた
そんな私に強気であなたに迫る術はなくて
溜息とリストカットで流れる血とともに未練を流した


あれからどれだけの時間が過ぎたのだろう
ちらちらと目の前に座る若い女に視線を送る
あなたの娘は、きっとあのくらいにはなったでしょう
あのくらいには美しく
まだ傷ひとつない肌で
流行りの明るい赤の無防備な誘惑は意識的か無意識か


空虚な嫉妬が胸を舞う
あなたの娘はなにも知らずに
まるで勝ち誇ったみたいに笑ってる
愛されてるのは私だと