月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

若気の至り

君は自分の不幸を売り物にするけど、臓器を売られるために生まれてくる子供だっているんだぞ
私の何気ない一言にあいつは声を荒げていた
愚痴をこぼしているつもりの私は過剰反応だとうんざり
あいつはそれまで見たり聞いたりしたものと比べて苛立ったのだろう
その女友達が「あの人の子供時代の話を聞いたら泣くで」
「身内にも裏切られて、Sさんにも裏切られて、一銭もない」
絶望的な状況で追いつめられて、あいつは極端な発想で私を攻撃した


「俺仕事やめないよ。Sさん大好きだもん」
裏切られても裏切られてもあいつはSさんについていく
女達から搾取し、自殺者や精神を病ませ、犠牲者を出しながら
あいつにしてみれば、母子家庭で育ったがゆえの父親がわりのため
Sさんはそれにつけこんでパシリに引きずり込んだ


女達を落として哂い、Sさんに落とされて泣くあいつ
望むものはなによりもSさんへ抱く父親がわりへの期待
時間も労力も金銭も搾取されているのに
ひたすらSさんについていく父性を求めた虫のいいあいつ


あいつは私からその分搾取しようと
独りに耐えられない私はつい応じてしまった
その分はSさんにまわる
Sさんはあいつの彼女である私に手出しはしない
互いに裏切らなければ


身内の肉も食らうものだ、とその筋の女の人が忠告した
それでも私は持っているはした金を取られるだけですんだ
Sさんも近づいてこなかった
彼女認定されていたから
そうして尽くすことでいつの間にか彼女ということにされ
ケツの穴まで抜かれたりはしなかった


運が悪かったのか良かったのか
蹂躙されて自分を見失いあいつにしがみついて
あいつは彼女ということにしてやってるから無傷なのだと
お前は惚れたら入れ墨を入れられてもいいタイプだからと
だから惚れさせないようにしているんだと
俺に惚れたら気が狂ったり自殺したり大変なことになるぜと
あの時は腹の中で大笑いした
世間を知り歳をとった今はその無防備さに冷や汗が出る


世間知らずゆえに突っ走った私が
傷を引きずっているだけで内面以外は傷つかないですんだ
若気の至りで許された
それはあいつとSさんのおかげなのだと歳を取って知る


大人になってデビューした私の女武勇伝のからくり