月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

30年ー後半ー

詩という言い訳のもとに思いを吐きつくして
ようやく現実に帰る
醜形恐怖で鏡を見れない30年
突然老眼鏡をかけてじっと洗面台を見る


水回りの汚さが目に飛び込んできた
皺だらけの顔や毛穴、しみを残酷に映し出す鏡
私の残酷な真実より鏡の汚れに呆然として


詩は排泄物だと講師が言った
空っぽになるまで吐いて吐いて
30年の時を経て今日突然に我に返ったらしい
V系ミュージシャンの動画もどこへやら
ひたすら洗面台の蛇口や鏡、小物を奇麗にして
残りの時間に大詩人の全集をひたすら読んだりして


私は等身大の私に戻りつつあるのだ
歳をとり恰好つけるのも疲れてきたのだろう
認められたいという夢も薄れ
こうして詩と呼べない形の日記を推敲もせずに


若くなくなった私を受け入れ
現実的に生きていきたいとふいに望みが湧いた
奇麗だからと芸能人に夢中になるのをやめ
家の中や私の身づくろいに立ち返ろう
日常を生きること
それが私を取り戻す唯一の方法なのだ


そして毎日少しずつ歴代の詩人の本を読み
背伸びして哲学を見につけるのを諦め
このような日記ではなく
願わくば種明かしのない詩を描ける日を夢見て
この惨めで孤独な30年を今日限りで終わりにして
残りの30年を「生きている」ものにしよう
むろん思い通りになど生きれはしないけれど