月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

無力

煙草の煙が図書館の喫煙室に臭いをこもらせている
長椅子に腰かけ時間を潰す私の横に
ホームレスのような身なりの高齢の男性がしゃがみこむ


ぽつりぽつりとかろうじて聞き取れる小さな声で
男性はうつむいたまま喋り出す


わしな、土方をしとったんじゃ
若いのはあかんねん、女はええんやで
けど男はな、集団でやられて……


男性はおずおずと微笑んでいる
その表情に内気さと弱さが滲み出ている
犠牲になるのはいつだってこんな人達


私には話を聞くしかなかった
数年前悪い男につかまった経験を照らし合わせて
親に守られ経歴と若さと女ゆえに世間に同情された若い女
男性と実際には何が違うというの


煙草を渡すしかできないでいる
そのぼそぼそとした囁き声を拾い上げることなどできずに
男性の不運を受け入れたかのような表情に悲しみを感じるしかできずに