月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

軽蔑すべき本音

差しだされた腕は 初めて男の人に与えられたなにげない仕草で
すんなりと頭を載せて 悪い夢でうなされた私を
あなたは軽く声をかけて起こし
そのあざとさの感じられない態度に
幾度も男の人に酷い仕打ちを受けてきた教訓を忘れて
このままあなたの腕といわず人生に私を預けたいと
自分の人生を私自身をあなたに依存して預けるという安っぽい考えを


物心ついた頃から虐められ無視され汚い目で見られてきた私が
自尊心を高く持ち自分を持って生きていく それが出来ずに
男に弄ばれ見知らぬ男に連れ去られそれさえも
自分をそれだけの魅力があると思っていると思われるのが怖くて
20年の時を経て匿名でこうして吐き出している


不思議なのは
時が暴行の痛みを和らげ記憶が薄れているのに対し
それを打ち上げたあなたにわかってもらえなかったことです
私を愛しているどころかどうでもいい存在だから
そうでなければ どうしてカミングアウトに余裕の笑みを浮かべれたでしょう


ずっと心の中で探し求めていたのです
男性経験のほとんどなかった私が暴行によって受けた傷の深さを
深刻に受け止めてくれる誰かを
そしてそれは友達や身内でなく愛する人であって欲しかった
ファンタジーだったのかもしれません
王子様によって救われるという


最初に誘ったのは私
もう最後の人にしといたらと言ってかまうようになったのはあなた
誘ったのは私 なんとでも言って期待させたのはあなたと
気が付けば私一人が蒸し返してる
そしてこの歳になって
男と女は言質をとるのは無意味なのだ
なんとでも言うのだ 私だってそうだったのだと
私も性的逸脱を隠すための嘘をついていたのだと今自覚した
10年の時を経て 思いを書き連ねてようやく


あなたは私を遊んで捨てたのだと恨んでいた
性暴力を受けて自暴自棄に陥った私を知らないくせにと
告白してもあなたは軽く流した 酷く傷ついて恨んだ
信頼関係など生まれるはずもないのはあなたのせいだと
言えばよかったのだ
良くも悪くも本音をぶちまけて出た結果なら引きずらなかった
けれどあの頃の私は
圧倒的は暴力と尊厳を踏みにじられ我を失っていた
それは言い訳にならないの?


わかっています
あなたはその場に居合わせなかったのだから知りようがないということ
加害者でなく 理由はわからないが様子のおかしかった私に
やばいという感情を抱きながらも近づいてくれたこと
それをよけいなお世話のように責めてあてつけに薬を飲んだ
「こんなに傷ついたことはない」とあなたはメールを
私の大量服用によってなぜ傷つく他人がいるのか今もピンとこない
あなたが傷ついたのなら ひっかき傷でも残せたのかと嬉しくさえ思う
もし死んでいてあなたのトラウマになっていれば尚良かった


自尊心が木っ端微塵に砕け散ったのは私だけなのが我慢ならなかった
あなたも傷つけばいいと思ったのです
私を愛していなくてもなんとも思っていなくても
ほんの爪痕でもひっかき傷でも残せれば
それが私の歪みなのでしょう


傷ついているのは私だけではないと
誰もが苦しみ悲しみを背負い傷ついているのだと
私には一生わからないでしょう
だからこそ救われずにこんなにも長い間独りで惨めさにまみれている
奇麗事なんてやはり言うことはできない
あなたも私と同じように理解者に恵まれず年老いていればいいと願う


最低でも本音をここだけでも吐かせて
私は私の痛みを生きることしかできないから
そしてここまで胸のうちを晒して気が付く
あなたの幸せを望むどころか
私と同じ不幸にとどまっていてほしいと望んでいた醜い面に


幸せまで這いあがるにはハードルはあまりに高く
不幸へのハードルは驚くほど低く
私はあなたに おいでおいでをしていたのです
たとえ自己憐憫に満ちた軽蔑すべき女と思われても