月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

傷口に皮膚を

俺はの、三人以上の世界をつくりたくないんだ
三人集まると、話が周りに漏れる
結婚している時、かみさんを女と思えないと友人に愚痴って
それがかみさんに伝わり離婚のきっかけになった


離婚によってあなたは親権を失い自殺志願になった
外部との接触を遮断した私はすっかり洗脳されて
上から目線の同情心を 私だけはあなたの味方だと


「俺のロボット」
携帯電話であなたは友人に私のことをそう言った
その頃にはすでにあなたしかいなくて
切り捨てられない私は プライドをなくした犬以下だった
犬ならばせめて 見返りのない愛があるでしょう


出口のない日々は
見かねた周囲の手助けによって ある日突然終わりを告げた
入れ替わり立ち替わり色んな人があなたの悪口を私に吹き込んで
愛という名の洗脳は いとも簡単に彼らの説得によって解けていった


あれから20年の月日が経ち
私はまだ覚えている 傷ついている
犬ならロボットなら あんな男を忘却の彼方に追いやられた
そうでないのは あなたが 私が 本音をぶつけすぎたから
騙すならいっそ 愛だの恋だの気障な台詞だけを並べ立ててくれればよかった


傷は骨まで達し 肉がついて 肉を覆う皮膚が再生するにはいたらない
剥き出しの肉を見る度に あなたの顔が 罵声が 優しさが蘇る
恨みはない 憎しみもない それらと軽蔑が混じり合えば楽になれるのに
肉の盛り上がった傷口は ただ虚しさを呼び起こす


誰か皮膚をください 傷が目について 眠れぬ夜のないように