月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

心の小さな窪み

……昔、私を好きだと言ってくれた男の子がいる
サッカーが好きで、勉強ができて、できずぎるほどでなく
学校で有名なイケメンだった


「Mの女」 私はそう呼ばれていた 
教室で 廊下で すれ違いざまに 振り返られ


時に噂された 当てつけにクスクスと笑われを繰り返した
「あの女が、あいつの?」


実際には私達は付き合っていなかった
「可愛くないから、お気に入りだけど付き合ってない」
彼に告白したある女は、そう言っていたと私に洩らした


笑っている時だけ隣に寄ってくる男だった
ニコニコと嬉しそうに
そして ある日「可愛い転校生」という物語的なものに
男はヘラヘラと行ってしまった


鏡を見れなくなる
目をメスで切開して二重にする
腫れぼったい瞼の脂肪を吸引する
鼻の段骨を削る 小鼻を縮小する 鼻の先を尖らせる



骨と皮と肉を切り取り 
心に空いた小さな穴を埋めようとして
いまだに埋め切れずに
心の表皮に少しでも触れれば
そこには小さな窪みがある
過去も未来も永遠に切り取られたまま消えた
面を平らにするため埋めた
シリコンの入った腰の痣の跡みたいに