月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

井戸の底から(私の魂より)

暗い
冷たい水が口の中まで入ってきて
沈むまいと手足をばたつかせる
ふいに頭上高く
陽の光で明かるく切り取られたような円の縁で
女の顔がこっちを覗き込んでいる
じっと複雑、悲し気な顔をして
助けて、と水を吐きながら叫んでも答えない
去っていく
あの円から……昔私をあそこから投げ入れた女が
お前は邪魔だと
魂を抜かれても生きていけると
生きていくのに魂を殺さねばならないと
私を殺した私
円が小さくなってゴトンと音がし辺りは完全な暗闇
寒い ここは体が痛くてちぎれそうに冷たい
あがき続ける 私は生きてるの
誰か

井戸の底(現在から)

心に井戸を掘って記憶を沈めた
それから20年
見たの 見たの
井戸の縁からそっと底を
暗闇にまぎれて
若き日の私がいた
殺した殺されたはずの魂が
それからおよそ10年におよぶ自暴自棄の時を
どろりとした井戸の底の腐った水に
足をとられて
もがいてる あがいてる
独りで空を掴もうとして手を伸ばしてる
かつて私を裏切った男の去っていく足を
白目を剥いて 凄まじいまでの必死さで 浅ましく
あれが私 死んだ私の魂の亡霊

ミエミエノユメ


「あいつには子供がいるんだぜ。なのに若い男を家に入れてるんだ」


ヤメテ ナマナマシイハナシヲシナイデ ワカレタオクサンヲ アイツナンテヨバナイデ


「あいつは子供が嫌いだったんだな。自分の子供だから、まだ……」


ヤメテ アナタノコドモダカラウンダト ソウイイタイノ ヒトリゴト キカセテイルノ


「子供が俺のところに帰りたいっていうんだ。あの子は人の顔色を伺うから」


ヤメテ ヒキトルナンテミエミエダワ ネコノヨウニ キエルカラ モウイワナイデ


ヤメテ ヤメテ ヤメテ
あなたには現実的な解決策
私には夢からの残酷な目覚め


マワタデクビヲイメルヨウニワタシヲキロウト ヤメテ チギレル ココロガ