真夏の盛り
けたたましくサイレンが鳴り響く
子供だった私は机の下に潜り
一分間の黙祷どころではなく
激しく迫るサイレンの音に
ヘリコプターの音が重なると
落ちる 爆弾が落ちると
耳を塞ぎ瞼をギュッと閉じた
学校の近くにある団地の一角が
家賃が安いと同級生が言う
幽霊が出るからと
しかし実際に幽霊を見た者はいない
知っているのは朝礼で歌う原爆歌集と
夏休みの登校日に上映される原爆フィルム
生々しさを抑えた 先生の語り
通学路に防空壕がばっくり口を開けていた
あれから30年壕は土で塞がれたのか
中学校建設のために山を切り開いて
埋まっていたたくさんの被爆者の骨
運動場の網を超えた手つかずの斜面に
慰霊碑が建立された
あれから30年 取り壊されてはいないか
何が忘れられ 何が残った はるか遠い夏