月美の卑屈を生きる詩

感情のおもむくままに

罪はどこまでも深く

Sさんが、Sさんが
熱に浮かれたように、あなたが言う


Sさん、二千円しか持ってないのに饅頭買って俺と分けたんだぜ
あの頃は俺金持ってて、楽しかったなあ


車のフロントガラス越しの空を
夢見るように微笑みながら、あなたは見上げる


女を惹きつけるためのあざとい演技から離れた眼差しで


普段現れないあなたがいる その横顔に罪はない
あなたを人生の最も楽しい季節から突き落としたのは誰


他ならぬSさんじゃないのと
私は真実をのみこむ
嘘で固めたあなたの人生を狂わせたなんてわからない
不幸から這い出ないそれがこの人の幸せなのかも
Sさんに地獄の果てまでついていくことが


あなたはたくさんの女を落とした
その業と罪を心の井戸の底に沈めて蓋を
やがてSさんの手であなた自身が沈められようと


行けばいい、今日はどこまでも晴れて
祝うように陽光があなたを包んでる
やがて闇夜があなたを照らそうとも

この歳になって

この歳になって誰かに見られたいわけじゃない
ただ気持ちを吐き出したいだけなんだ
それなら日記でもかまわないはず
そうだ私にもわからない
きっと露悪趣味的な何かなんだろう
曝け出して同情を買うか下劣な奴
いやそうじゃない


この歳になって同情されたいなんてことはない
まだ誰かわかってくれるなんて期待を
そんなものを持つほど世間知らず
ちがう私にもわかってる
たぶん負け犬が吠えてるだけだろう
負かした奴に向かって悔しいだけ
そうそれだけなんだ


だから誰も本気になんかしないでくれ
本音を言うと楽になりたいだけなんだ
誰もが孤独で辛いのがわからないとか
まさかそんなみっともない歳の取り方
しているのかなしているんだろう多分


この歳になって この歳になって

お願い

ママ
パパとお別れする前は朝起きてくることはなかったのに
どうして新しいパパのためなら起きてご飯をつくれるの


パパ
パパはとってもハンサムだったけどママはパパ嫌いって
どうしてママがいるのに新しい女の人のとこ行くのって


ママ パパ
私もうどっちの話も気持ち悪くて聞きたくない気づいて
私もう子供じゃないママの彼氏が私を見る眼に気づいて


ねえ ママ パパ
学校帰り私をじっと恨めしそうに見ていた女の人がいた
学校でパパのマンションの子がパパの彼女だって言うの


ねえ ママ パパ パパ ママ
私を見て 私だけを見て 私を見ているあの人達を見ないで
 
パパ ママ 
愛してる